クイチャーおと~り 第三便
敬虔な祈りの中から生まれ、古くから生活にも密着した、宮古島伝統の民族芸能「クイチャー」への思いや、クイチャーを通して映る島の文化や風景などを、宮古島特有の泡盛の飲み方「おとーり」を模して、リレー形式のエッセイでお届けする「クイチャーおと~り」。
第三便はクイチャーフェスティバル事務局長の粟國和伸さんです。
※ ※ ※
『第一回 クイチャーフェスティバル 2002』の開催の1年ほど前から、クイチャーを(宮古を?)どうにかしたいというメンバーが月1~2回集まり、「どういう形にするか」「予算はどうすか」「どこで開催するか」などを話し合ってきました。メンバーは宮古人、ナイチャー(いわゆる内地人)、会社員、ミュージシャン、舞踊家などなど。
私自身も準備委員会に入っていましたが、もろもろの理由から「クイチャーフェスティバルで、中心の仕事は出来ませんが…」と断りを入れ、理解をいただいた上でお手伝いをさせてもらっていました。
ところが第一回開催の2ヶ月前、それまで中心で動いていただいていた方が、仕事の関係で、突然、事務局長を降りてしまいました。急遽、実行委員長の下地暁さんから「とにかく事務局長を引き受けて欲しい」と頼まれましたが、前述のように私はサポートのつもりでしかありませんでしたので、始めは断りをいれました。
しかし、暁さんのしつこさ(?)に根負けし、また、今、クイチャーフェスティバルが頓挫すると、これまでがんばってきた準備委員会の苦労が無駄になるとの思いもあり、最終的には事務局長を引き受けることにしました。
※画像は、第三回クイチャーフェスティバル2004の様子(呼称は参加当時の団体名です)
開催まで2ヶ月というのは短すぎで、出来ることには限界がありますが、とにかく暁さんと動き回りました。行政、出演団体、スポンサー関係…etc
回り始めてビックリしたのは、クイチャーフェスティバルを『単なる金儲けのためにやっている』、という間違った捉え方をされていることでした。特に行政の担当者には、「だから、一切かかわるなと通達を出してあった」とまで云われる始末でした。
それでもふたりで根気良く説明して、ご理解をいただき、どうにか協力を取り付けることが出来たのは、今でも奇跡に近いように思います。
兎にも角にも、2ヶ月という短い期間で、会場の手配、スポンサーの獲得(クイチャーフェスティバルは、行政などからの助成金は一切なく、実行委員全員でスポンサーを集めています)、出演団体の調整、ボランティアの依頼などが出来たのは、ひとりひとりの強い思いがあったからこそ可能にしたのだと思います。
第一回クイチャーフェスティバルの開催は我々の予想をはるかに上回る出演者、観客数でした。また、初めて多くの創作クイチャーが披露されたことは特筆すべきもので、創作のほとんどを手がけていただいた琉舞師匠の亀浜律子先生に、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
私たち実行委員会では、運営ノウハウが形作られる5回までは、屋内(宮古島市総合体育館)で開催することを確認していました。
ところが、第2回開催の2003年9月、宮古島に甚大な被害をもたらした「台風14号」が襲来し、体育館の屋根も吹き飛んだばかりか、ライフラインも寸断され、宮古島全体が復旧に追われる日々が続きました。これもまた、開催予定日の2ヶ月前のことでした。
「このような時にクイチャーフェスティバルで浮かれている場合ではない」との意見が実行委員の中から出たので、急遽、出演団体を招集して、第2回フェスティバルの中止を伝えました。その時、伝統保存会の先輩方から出た言葉が、「あなた達はなにを考えているか。こんな時だからこそ、みんなでクイチャーを踊って、宮古のアララガマ魂(なにくそ負けないぞ!という意味の宮古方言)を喚起して地域の人たちを元気づけるさ!」でした。
まさに「目からウロコが落ちる」というか、宮古人のアイデンティティを感じた出来事でした。
それから会場を野外に移して開催するために、全員で準備の練り直し、設営の方法など毎日話し合い、何とか当初の予定通りの日程での開催にこぎつけました。
2回目までの話で誌面をだいぶ使いましたが、そのたった2回の間に、形だけでない『宮古人の心』が表れているように思いますし、その結果として7回の開催を数える間に、保存会を復活させてクイチャーフェスティバルへ参加する地域も出てきています。
しかし、他聞にもれずクイチャーフェスティバルも、7回の開催という期間の中で『生むは易し、されど充実・継続は。。。』ということが見え隠れし始めたような気もします。
今後は初心に立ち返り、伝統を大事にしながら、創作の部を充実させて、地に足の着いた宮古を代表すねフェスティバルに成長させたい。
そのためには若い人の『実行委員への参加』『ボランティアへの参加』『出演参加』、また多くの皆さんからの『物心両面からの支援』も重要かと思いますので、南の島のイベントにいろいろな形で、ご参加くださいますようお願い申し上げます。
タンディガータンディ(ありがとうございます)。
数字で見るクイチャーフェスティバル(第7回までの延べ数)
出演者 8098名
出演団体 172団体
観客 26000名
ボランティア 411名
クイチャーフェスティバル事務局長 粟國和伸
※ ※ ※
◆クイチャーフェスティバル
HP
http://quicha.sakura.ne.jp/
Blog
http://quichafestival.ti-da.net/
#2009年の第八回は、11月1日に開催(毎年11月の第一日曜日)
【メモ】
2006年(平成18年)12月:離島フェア実行委員会より「島おこし奨励賞」を受賞。
2007年(平成19年)3月:(財)地域活性化センターより「ふるさとイベント大賞奨励賞」を受賞。
(制作+画像提供:
クイチャーフェスティバル実行委員会 企画編集:モリヤダイスケ)
関連記事