島の本棚~宮古島を読む~
宮古島から発信するWEBマガジン「あんちーかんちー」は、宮古島にこだわって宮古島の楽しさ面白さをお届けしていますが、「もっと宮古島を知ってもらいたい」「もっと宮古島を好きになって欲しい」、そんな発想から宮古島を題材や舞台とした、本を紹介するという新しい試みを企画。そこには決してWEBマガジンでは伝えきれない、本という媒体の持つ素晴らしさが広がっていました。
今回の企画に際し、宮古島の図書館を応援する草の根ブログ、
「島の図書館へ行こう!」を運営しているmyklibvo1さんにご協力いただきました。選書していただいたmyklibvo1さん曰く、「初心者向けのガイドブックより、一歩進んだ薀蓄(うんちく)的に宮古島を語ってみたい方にオススメの3冊」をご紹介をいただきました。3冊それぞれにアプローチの異なる宮古島が登場し、とてもバラエティに富んだ面白いセレクトは、myklibvo1さんの島と本にそそがれた愛とこだわりを感じました。まさしくそれは「読めば宮古」です!
『エヴリブレス』
瀬名秀明
とっても柔らかな優しい印象の作品です。昨年の3月に刊行されました。
高校時代に好きだった先輩へ想いを伝える機会をえられないまま、主人公の女性の100年の人生が流れていきます。背景となるのは現代からちょっと先の未来で、携帯電話やインターネット上の仮想空間(少し前に話題になったセカンドライフを彷彿させるような)の技術が格段に進歩し、それが社会にすっかり受け入れられていて、人々のコミュニケーションのあり方までも変化している、そんな時代です。
著者はこれまでに科学を題材にした小説やノンフィクションを数多くてがけ、その実績が高く評価されている瀬名秀明さん。これまでの豊かな経験と感性とで科学技術をさらりと羽織り、物語をセンスよく進行させる手腕はさすがです。
さて、肝心の宮古島ですが、物語の後半に登場します。主人公の娘が宮古島出身の男性と結婚し、宮古に移り住みます。のちに二人の間には女の子が生まれ、宮古でのびのびと成長した娘は宮古高校に進学します。宮古が世界に誇る「地下ダム」や珊瑚礁由来の島の成り立ち、台風や干ばつといった自然災害との戦いであった人々の暮らし、そして環境と共生していく未来の宮古島市政が物語のもうひとつの舞台となります。ちょうど昨年3月末に「エコアイランド宣言」を行い、そして今年1月には「環境モデル都市」選定を受けた我が宮古島市。この物語の中の宮古島のように「科学と自然の融合した理想地区として世界の注目を浴びている」存在を目指したいですね。
ここ最近ですが映画やCMといった映像メディアを誘致し、観光産業へとつなげていく「フィルムコミッション」が宮古でも話題です。開催された勉強会の席で、とある映画監督が「結局はそこに撮りたい物語があるかどうかですよ」とおっしゃった言葉が印象的でした。知られざるドラマを発掘することも大事ですが、すでに世に出ている宮古島の物語を再認識することも大切なのかもしれません。
というわけで、2冊目にご紹介するのは『みやこのみんわ 全3巻』です。この民話集はこれまで口伝であった島の物語が時代の変化とともに継承が困難になってきたことを危惧し、有志の「宮古民話の会」が丹念におじい、おばあに聞き取りを行って編纂されました。第1版は昭和60年に刊行されています。宮古のネイティブ方言を操れる人は今時の若者でさえ希有な存在ですが、当時のご年配の方の言語はさらに世代の隔たりがあったそうです。語られるお話をテープに録音し、さらに方言を現代語におきなおし、そして「民話の会」の一番の願いである「子供達に伝えていく」ことのために、さらに易しい言葉づかいで分かりやすく語りなおす、といった大変な努力がありました。
私の小学生時代には「方言大会」という催しが学校対抗でありました。代表は希望者から選ぶといったものではなく、クラス全員がエントリーされ、この民話集から選んだお話をみんなの前で暗唱して決められました。方言を交えたり、感情豊かに表現する子が高い評価を与えられました。この大会をきっかけにおじい、おばあから方言を習い始める子もいたので文化の継承に一役も二役も買ったのでは、と思います。
小学生が暗記できるほど易しい言葉で短くまとめられた物語はとても親しみやすく、どの世代にもおすすめです。地名や場所由来のお話も多く、知らなければ通り過ぎてしまうような場所がこれからの観光スポットとして魅力的な存在になるのかもしれません。
文化や物語は人々が暮らす自然風土の中で育まれていくものです。宮古島は沖縄県の中でも特異な自然環境があり、琉球弧の歴史をひも解く上でも宮古に残された謎がその解明の鍵を握っているとも言われます。
最後にご紹介するのは昨年1月に出版された『沖縄の宮古島100の素顔 もうひとつのガイドブック』です。宮古に亜熱帯農場を有する東京農業大学より刊行されました。
内容は「宮古の歴史・文化・生活・自然・動植物・農業などについて専門の目で捉えたカラー写真とエッセイ集(本書冒頭より)」。執筆者は宮古を代表する文化人や宮古をフィールドに研究を続けてきた方々で、とても豪勢な布陣です。といっても難しい論文集ではありません。きれいな写真をたくさん使い、語り口も易しく軽快で、執筆者によってはユーモアあふれるページもあります。小さく手に取りやすい大きさと、すぐに読めるページ数は読み手への配慮が伺えます。それほど、多くの方に読んでいただきたいとの願いが込められているのです。エコツーリズム、グリーンツーリズムが宮古でも注目され、島人による観光案内が推進され始めています。この分野に関心の高い方にとっては必読の書といえるでしょう。
草の根の活動として、宮古島の図書館を応援しているmyklibvo1さんは、島に暮らす人々に宮古島市立図書館の活用をお手伝するブログ、「島の図書館へ行こう!」を開設しています。
ホームページのない市立図書館を補完する役割として、「図書館あんない」「新着本のお知らせ」「新図書館の話題」などの図書館情報をブログで発信するとともに、インターネットから蔵書検索や予約ができるサービスとった、より良い図書館サービスの拡充が高く期待されている、2013年に完成予定の新・市立図書館の開館に向けて、全国の図書館の話題や事例を紹介し、宮古島らしい図書館の活用について提唱を行うなど、利用者にとっても図書館にとっても、楽しい図書館ライフのお役に立つことを目的に図書館を応援するボランティア活動を行っています。
「島の図書館へ行こう!」
http://miyakojimalibvo.ti-da.net/
※ ※ ※
「エヴリブレス」
瀬名 秀明 TOKYO FM出版
ISBN 978-4887451957
発売日 2008年3月14日
「みやこのみんわ」
かたりべ出版
発売日 1985年9月30日(第一集)
「沖縄の宮古島100の素顔 もうひとつのガイドブック」
東京農業大学出版会
ISBN 978-4886940643
発売日 2008年1月10日
おわりに。今回ご紹介した本(「みやこのみんわ」「沖縄の宮古島100の素顔 もうひとつのガイドブック」)は、宮古島市立図書館
(地図はこちら)で読むことができます。
(文+写真+編集:モリヤダイスケ 協力:
島の図書館へ行こう!@myklibvo1)
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