島の本棚 -NIGHT OF GOLD- Vol.001
宮古島にこだわり続け、宮古島の面白さをなんやかんやとお届けしている「あんちーかんちー」ですが、WEBの誌面だけでは伝えきれない宮古島の大きな魅力を、「もっと宮古島を知ってもらいたい」 「もっと宮古島を好きになって欲しい」という想いから、沖縄・宮古島を題材や舞台にしたさまざまな本を紹介する企画「島の本棚」。
これまでシリーズ第一弾の
「島の本棚~宮古島を読む」(2009年3月~7月隔月掲載)に始まり、沖縄教販宮古店とタッグを組んだ第二章
「島の本棚~Read Or Dreams」(2009年9月~2010年1月隔月掲載)と続いた「島の本棚」がリニューアルしてSeason3の開幕です。
「島の本棚~NIGHT OF GOLD」 ~活字が躍れば金色の闇は、叡智の泉に生まれ変わる。
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沖縄で100年続くコミュニティビジネス 「共同店ものがたり」
地域に住む人々が共同で出資して集落のために運営されている、村の売店「共同店」のガイドブック。本島北部を中心に68ある個性豊かな共同店すべてが紹介されています。
共同店は今から100年以上も前の1906年に、沖縄本島最北の奥集落で生まれました。道路が整備されて発展した車社会となっても、24時間営業の大型スーパーの進出があっても、脈々と共同店がそこに息づいているのは、単なる集落の販売店だけにとどまらない総合コミュニティ企業体として、地域にしっかりと根付いているからであり、文字通り、村の共同のお店だからでした。
宮古島にも狩俣と島尻の2ヶ所(かつては成川にもあったようですが、近年まで残っていた廃店舗も道路拡張によって取り壊されてしまいました)があり、何度となく利用したことがありますが、集落にとって必要な品物は街のスーパーやコンビニ以上にそろっている最強のお店。集落という狭い商圏での需要を確実に売上へと結び付けており、狩俣購買店は共同店初の株式会社化するほどの売上を上げています(
狩俣購買店、株式会社に 県内共同売店で初/琉球新報)。
また、共同店特有の会員システムである「御通帳(おつうちょう)」は、今でいうといころのポイントカードや電子マネー(御通帳は電子じゃないけど)のような役割を持ち、キャッシュバックキャンペーンまであったりするので、その先見性に驚かされます。いや、共同店を作り上げた先人たちの知恵が、新しい形となって今の世の中で使われているのです。素晴らしき集落(シマ)社会です。
話がそれましたが、この本は各地の共同店のデータを単に紹介するだけでなく、集落の特色や歴史、村の特産物などについてもふれられており、読むとついつい共同店を訪れてみたくなる素敵なガイドブックなのてす。
日本の島ガイド SHIMADAS
北は択捉島から、南は沖の鳥島まで、無数の島がある島国ニッポンの島々を網羅した、島旅人のバイブルともいわれている1328ページもあるとっても分厚いガイド本です。もちろん、島だけで構成されている沖縄県も49の有人島だけでなく、名のある無人島まで余すところなく掲載されています。本の厚さからもすでに判る通り、このSHIMADASの島に対する情報量は圧倒的です。
島の面積や人口、交通機関(入出島と島内交通)といった基礎情報にはじまり、景勝地や特産物などを紹介する観光情報のほかにも、祭り、伝説、方言、偉人、著名人、島おこしやIターンの取り組みといった、その島ならではの暮らしや習慣、伝統などコアな情報が詳細な地図とともに島ごとに紹介されています。
宮古列島は宮古島をはじめ、伊良部島、下地島、池間島、来間島、大神島、多良間島、水納島の有人8島に加えて、筆岩(1995年に島として認定された無人島。大神島の北東にある灯台しかない)も収録されており、もう島マニアなら眺めているだけでも楽しい「島辞典」です。
膨大なデータを集積したSHIMADASは1993年夏に創刊され、2004年には6年ぶりの大改訂が行われました。今のところ“最新”となる2004年版から6年もの時間も経過しているので、そろそろ新しいデータが満載されたSHIMADASが欲しいところですが、次の改訂版の刊行は残念ながらまだ未定とのこと(ただ、版元によると現行版が店頭在庫分を最後に、遂に完売したそうなので期待したいところ)。
全国津々浦々、余すところなくニッポンの島を網羅しているので、島旅する前に基礎知識を得るだけでなく、ニュースなどで話題となった島がどんなトコなのかを調べたりすることで、家にいながらにして島旅を楽しむことが出来る、そんな一冊。
青い目が見た大琉球
18世紀末から19世紀にかけての大航海時代末期、琉球王国へと来訪した欧米人たちが記録した航海記、紀行文、報告書、新聞や雑誌などに描かれた、琉球の風土、風俗などの貴重な史料をビジュアルで捕らえた本で、小難しい歴史本ではなく、ページをめくるたびにあらわれる琉球の美しい情景がそこには広がっています。
当時はまだ写真技術が成熟しておらず、もっぱら帯同する画家によるスケッチを版画におこし、遠征記などとして出版され、海の向こうの小さくも美しい島国を紹介していました。今でいうディスカバリーチャンネルのような、「知られざる~」のような雰囲気だったのかもしれません。
貿易、学術、侵略などその目的はさまざまだったと考えられますが、現地の資料として細密に描かれており、技術の高さもさることながら、島の暮らしぶりを鮮やかに描かれていて、この時代の琉球の世界への想像力を書き立ててくれます。
その一方で重版や海賊版などが幾度も作られ、勝手に版をアレンジしてオリジナルとは微妙に変化(ある意味、劣化ではあるが)した琉球を生み出していたりもしていて、これを比べて見せるあたりもまた面白いです。
大海原を越えて探求という熱意とともに琉球へとやって渡って来た青い目の来訪者たちは、美しい自然と平和を愛する人々の暮らす楽園、守礼の邦だと総じて琉球について綴っています。これはきっと沖縄となった今も連綿と息づいている島の魂の部分なのではないかと、この本は改めて気づかせくれました。
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【書籍データ】
「沖縄で100年続くコミュニティビジネス 共同店ものがたり」
監修 / 宮城能彦(沖縄大学地域研究所) 伽楽可楽(季刊カラカラ別冊)
発刊日 2008年10月17日
ISBN 978-4-903-63504-0
共同店ファンクラブ
http://kyoudoubaiten.ti-da.net/
「日本の島ガイド SHIMADAS(シマダス)」
財団法人日本離島センター
発刊日 2004年7月
ISBN 978-4-931-23022-9
しましまネット
http://www.nijinet.or.jp/
「青い目が見た大琉球」
編者 / ラブ・オーシュリ+上原正稔 監修 / 照屋善彦 ニライ社
発売日 2000年6月
ISBN 978-4-931-31442-9
◆バックナンバーは
コチラ
(文:密牙古文化部 写真+編集:モリヤダイスケ)
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