宮古島産完熟マンゴーへの道

あんちーかんちー編集室

2009年05月26日 09:00

宮古島名産の果物といえば、魅惑の果実とも呼ばれているマンゴー。宮古島産完熟マンゴーは島特産のブランドとして全国に大きく知れ渡るほどにまで成長しました。そんな宮古島産完熟マンゴーの収穫時期は7~8月と、もう少し先になりますが、すでに4月頃からインターネット上での先行予約も始まっています。となると、やはり気になるのは今年のマンゴーの出来具合ではないでしょうか。

宮古島のマンゴーは沖縄県の拠点産地に認定され、宮古島産マンゴーのブランド化も、より高まると期待されています。県内のマンゴー拠点産地は宮古島市の他に、豊見城市と沖縄市が認定されていますが、内閣府沖縄総合事務局の『平成18年産園芸・工芸農作物市町村別統計書』によると、宮古島市の収穫量は248トンを数え、ダントツの県内第1位の生産量を誇っています(宮古島市の統計では2008年は350トンとの発表もあり)。その一方で、昨年は業界を震撼させた偽装事件もおこるなど、安心のできる上質な宮古島ブランドの確立も急務となっています。
4月上旬。数軒のマンゴー生産者さんの元を訪れ、マンゴーを知るために色々とお話を伺いました。どこの生産者さんも防風林で囲まれたハウスの中で、実ったばかりのマンゴーたちが大切に守られながら栽培されていました。今年は気候の良さも手伝って開花も早く結実も良いそうですが、一昨年は大豊作、昨年は不作と振り幅も大きく、完熟して出荷するまで油断は出来ない農作物なのだそうです。
マンゴーの県内一大産地である宮古島でも、わずか30年ほど前から栽培が始まった新しい農作物で、日々、生産者の方々は日々の観察から独自の工夫を凝らし、さまざまに試行錯誤を繰り返して丹念に栽培に汗を流しています。
宮古島でマンゴーの栽培を黎明期から続けている、生産者さんからお聞きした苦労話では、当時は栽培のノウハウもまったく確立されておらず、今のようなハウス栽培ではなく、台湾と同じように露地栽培でスタートさせていたそうですから驚かされます。
この4月の時点で、今年のマンゴーの出来を占うにはまだ早いのですが、マンゴー生産者のおひとりに、今年の感触を聞いてみると、昨年は害虫のアザミウマが大量発生して、散々な状況だったそうですが、ダメと判った時点でバッサリと枝を切り、今年に向けて木を休ませたこともあって、害虫にやられた木に元気が戻ったそうで、今年の出来はまずまずではないかと話しておられました。
マンゴー作りに限らず、農業は時間も手間もかかるものだけど、きちんと時間と手間をかけてやれば、ちゃんと答えてくれるのが農業だと生産者の皆さんはそろって答えてくれました。マンゴーに対する愛情と、美味しい物を届けたいという情熱が詰まっているようです。
ハウスの中にはピンポン玉よりひとまわり大きいくらいの、実り始めたばかりの可愛らしいマンゴーがなっていますが、このまま大きくなるのを待つ訳ではなく、こからさらに育ちの良いものだけを摘果して、選りすぐりのマンゴーだけを育ててゆくのだそうです。
5月中旬。再びマンゴーハウスを訪れると、ハウス内の風景は一変していました。摘果されてさらに選び抜かれたマンゴーたちが、玉吊り(日当たりを考慮したり、自重で擦れないようにマンゴーの付いた枝を紐で吊る)をされて丸々と育っていました。紐で吊られたマンゴーはおおよそ枝一本につき、ひとつだけが実っています。幹から伸びた枝には、たくさんの花が咲き結実しますが、その中から状態の良いもの、勢いのあるもの、形の良いものを厳しい目で選ばれて摘果されます。今残っている実は、無数の予選をひたすらに勝ち抜き、多くの敗者の上に立つワールドカップの出場を勝ち取った代表ようなもの(ここから本戦で、完熟するまでさらに厳選されていきます)。
一見、実ったたくさんの実を育てれば、注目されているマンゴーだけに売上にも、出荷量にも直結しそうなものですが、それでは枝から送られてくる栄養をすべて実に蓄えた、美味しいマンゴーを生産することは出来ないのだそうです。思い切りをもって摘果しなければ、本当に自信を持てるいいものが作れない。だから、ハウスから出荷するものは全部が秀品。本物ではないミニマンゴーは作らないと云い切る、妥協を許さないプロの仕事がそこにはありました。
日々、ぐんぐんと育っているマンゴーは、これからひとつひとつの色つき具合を確かめながら袋がけをおこない、早ければ6月下旬から7月頃には最初の出荷が始まります。この夏は宮古島の太陽の恵みを受け、生産者の愛情が注ぎ込まれた、宮古島産完熟マンゴーを味わってみてはいかが?

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◆取材協力 オキナワ宮古市場 [宮古島マンゴー市場]

(文+写真+編集:モリヤダイスケ)
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