電子基準点950498
今回の「あんちーかんちー」は、またまたマニアに迫る島のちょっと変わった物を見てきました。それは電子基準点という代物です。なにそれ?って疑問も多いと思いますので簡単な解説をしながら、見てきたレポートをしてみましょう。といいつつも行ってみたら、あまりにも面白かったのでついつい脱線してしまったのは云うまでもありません。
まずは基準点という物。簡単にいえば測量をする時に基準となる公的に設置された点ことで、三角点、水準点、基準点などがあり、使い道や利用度合、精度などで埋石杭、プレートなどさまざまな形のものがあります。そんな“点”のひとつが、最近では携帯電話にも搭載されているGPSを使った基準点が、今回見に行ってきた電子基準点です。
ついでなので、GPSも簡単におさらい。全地球測位システム(グローバル・ポジショニング・システム)といい、衛星からの信号を受信して位置情報を得るシステムで、カーナビなどさまざまなものに利用されています。また、地図記号としても新たに作られ、従来の三角点と電波塔の記号を合体させたようなマークに仕上がっています。
今回訪れた電子基準点は城辺地区の西中(にしなか)集落にある、
宮古島市社会福祉協議会の裏手。いこいの森公園の一角です。芝生の広場の隅にぽつんとたたずんでいる、街灯のような形をした銀色の柱が電子基準点「950498」です。
コンクリートの土台の上に立つ電子基準点からは低く唸りをあげて、内部で何かが動いている音が聞こえます。きっと宇宙にある衛星と交信しているのでしょうか(理論的には正確な表現ではありません)。
銀色(錆びにくいステンレス製のようですが、さすが宮古島。うっすらと錆びが出ているところかあります)のポールに、建設省国土地理院の電子基準点であると記され、「電子基準点は、地上約2万キロの高さを集会するGPSを衛星が発信する電波を受信し、この地点の位置を観測するための施設です。受信デ
ータは毎日、つくば市にある国土地理院に毎日転送してます。この受信データは、土地の測量、地図の制作、地震・火山噴火予知の基礎資料として利用されます」と紹介されていました。
土台の隅には電子基準点付属標というもあり、ピカピカなメタルの標に電子基準点が写りこんでちょっと格好いいです。
で。この電子基準点のある「こいいの森公園」ですが、島の公園の例にもれず、なかなかシュールで廃れ具合も抜群です。まずは入口にあるフラワートンネル。確かにオープン当時は見事なフラワーのトンネルだったかもしれませんが、現在は通り抜けるのがちょっと怖いくらいに生い茂っています(奥のトンネルに至っては屋根部分は崩壊して柱だけが緑の中に埋もれています)。
芝生広場の中央にどーんと構えている、石造りの城跡らしきものが雑草におおわれて鎮座しています。案内板によると「ぐすくの砦」という呼ばれているようですが、こんなところにかつて城(ぐすく)があった史実はなく、そもそも城跡としてのスケールがやたらと小さい。恐らくは遊具に近い、石造りの築山といったところであろうが、未整備なので登りたくなる雰囲気はおよそない。
更に、このいこいの森は中央の芝生の周囲(ふたつのフラワートンネルを結ぶように)に歩道があるらしいのだが、南国の緑に侵食されて完全にロストしていた。また、外周のジョギングコースの入口にある案内矢印はジャングルを示しており、藪漕ぎどころか道すらもはや存在していない状況にあった。また、奥に果樹園とあるので足を伸ばしてみたが、関西宮古の森が記念植樹したと思しき跡があるだけの雑木林が広がっているだけだった(一応、奥の奥にマンゴーハウスらしきものがひとつだけある)。
ま、ここより凄いのは道を隔てた反対側に儲けられた、城辺町いこいの森(恐らく第一期的な作りと考えられる)。こちらは完全に道すら藪に埋もれ、木々のわずかな隙間から、池と池の端にあるベンチをチラ見するだけというありさま。
そんな「いこいの森」の背後には、誰が名づけたのか通称
「居恋岳」の展望台から眺める眺望は素晴らしいのひとこと。それもそのはずで、この居恋岳の山頂に立つ水道タンクのてっぺんこそが、宮古島の最高所なのである(目測標高は約125メートル)。展望台からの風景の中に電子基準基準点がチラリと見えています。そしてその奥、サトウキビ畑の中に小さく見えている異様なシルエットは西中共同製糖場のレンガ煙突。
周辺地域のサトウキビ農家が共同で出資したローカルの製糖工場として1942(昭和17)年に建設され、含蜜工場として稼働を開始するも2年後に、大戦の激化に伴い軍へと強制接収され終戦、再開されぬまま廃場となり、やがてレンガ造りボイラー用の煙突だけが残されました。その後、どこからやって来たガジュマルの種が煙突内で成長し、先端から茂々と枝を伸ばすようになり、いつしか奇妙なシルエットをしている煙突は西中集落の名物となりました。尚、この近代遺産は市が指定する史跡リストには特に掲載されていません(脇にある標柱は旧城辺町で設置した模様)。
電子基準点を見に行くというネタが、公園から展望台、煙突と周辺にまで拡大する形となりましたが、なんとなく面白く思っていただければ幸いです。さて、最後に話を電子基準点に戻しますが、このGPSを活用した設備は全国に1200ヶ所ほどあり、県内には23ヶ所(2009年現在)あり、宮古圏域にはいこいの森の「950498」の他、伊良部島の宮古島市立伊良部中学校にある「960747」と、多良間島の宮古市の森公園(1855年/安政5年に多良間島沖合で
岩手県宮古市の商船が遭難し、救助・生還させたことを記念した公園で、この公園の宮古は岩手の宮古のことである)の「960748」があります。近くを訪れた際には宇宙から繋がっている電子基準点をちょっと眺めて地球の大きさを感じてみてはいかがでしょうか。
[資料]
電子基準点とは/国土地理院
電子基準点データ提供サービス
ムトウ測量
週刊テレビAGANNYA ライブラリー/城辺町西西
(文+写真+編集:モリヤダイスケ)
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