宇宙とヒトをつなぐもの-スペシャルレポート2-

あんちーかんちー編集室

2010年03月16日 09:00


先月掲載(2010年2月16日)された、「宇宙とヒトをつなぐもの」の壮大なプロローグの続編です。このレポートは「思えば宮古」の宮国優子と、同郷・宮古の友人でもある本村佳世のおふたりが、東京で行われたこのイベント(開催は2010年1月17日)で宇宙とつながる宮古をふつふつと感じた結果が、高い熱量として形成されたためレポートとしては異例の短期連載となっております。それでは「宇宙とヒトをつなぐもの」スペシャルレポート“中ぬ章”。

◆     ◆     ◆

また、き゜たんどー(また、きたよー)。
第二回スペシャルでございます。今回も隊員A(宮国)と、隊員B(本村)でお送りいたします。
住所は「局部銀河団 局部銀河群 銀河系 オリオン座腕 太陽系 地球」です。影響されまくりです。
なぜ、隊員なのか、それは宇宙の雰囲気に飲まれてるからです。浅はかながら、それが理由です。

あぁ、その前に「き゜」の説明を。書き間違いではありませんので、ご心配なく。
「ks」と発音します。「き」と「す」を同時に発音する感じです(“き”の半濁音)。

第一部の「最新の宇宙の姿」 小阪淳さん(美術家)、小久保英一郎さん(天文学者)
第二部の「古代の宇宙観」の後藤 明先生(文化人類学者、考古学者)


皆さんが熱烈にお話しされていたことがまとめられた言葉を青字でまとめてみました。
なんて、嘘です。どなたかがおっしゃっていました。

「往古来今謂之宙、四方上下謂之宇」
(おうこらいこん、これを ちゅう という。しほうじょうげ、これを う という)
     ━━━ 淮南子(えなんじ) 「斉俗訓(せいぞくくん)」B.C.2世紀


「宇宙」という語の語源はこれなんだそうです。「宇」とは空間で、「宙」は時間のこと。つまり「宇宙」=「時空」、時間と空間がともにあるものが宇宙だと。
なんて2300年も前の人が、考えていたんですね。あがい、だいず、すごいさいが(あら、大変、すごいものですね~)。

冒頭で、美術家の小阪淳氏は、自らが製作に携わった「一家に一枚 宇宙図2007」を紹介されました。
なんとこれ一枚で、宇宙ができてから137億年の歴史が一覧できます。

「宇宙図」 http://www.nao.ac.jp/study/uchuzu/

白い半透明のお椀の真ん中に、しずく(中学の数学で習った反比例の図も思い出してしまった・・・)。
縦軸が時間の経過、横軸が空間の広がりです。地球が生まれたのは46億年前なので、地球の歴史は縦軸の上3分の1。人類の歴史なんて、いぴっちゃがま(ほんのちょっと)です。

底辺が宇宙の誕生した137億年前、上辺が現在。上辺の円の中心が「今、私たちのいる場所」。

外縁の曲線=空間の広がりは、時間の経過とともに宇宙が膨張して広がってゆく様子を表しています。中心が地球なので、横軸は地球からの距離でもあります。宇宙は生まれたその瞬間からずっと膨張し続けています。
宇宙ができたばかりの頃は、光速をも越えるスピードで膨張していたのだとか。それはつまり、星と星の間の距離もどんどん広がっていっている、ということでもあるらしい。私たちが今、夜空に見ることのできる星の光は、膨張のスピードにも負けず、何万年、何億年もかけて地球に届いたものなのですね。
だからこそ、「宇」=「空間」であり、 「宙」=「時間」なのか。 あがい、とーと(尊い)! 天を仰いで、拝みたくなります。

その、膨張との綱引きに勝って、私たちに輝きを届けることのできる星を表すのが、宇宙図の中心にあるしずくなのだそうです。
次に登場した天文学者の小久保英一郎氏は、「Mitaka」という、宇宙のさまざまな観測データをもとにした宇宙の映像ソフトを紹介されました。国立天文台の4次元デジタル宇宙(4D2U)ドームシアターで上映されているものだそう。
アニメーションで、視点が地球からぐんぐん離れていきます。やがて太陽系から遠ざかり、銀河からも遠ざかっていく中で次々と現れる星、また星。そして星の集 まり、他の銀河・・・。
これまで一面に見上げていただけだった数々の星々が、何階層もの奥行きを持ってスクリーンに登場します。その風景はもう圧巻。空は 平たい天井ではなかったのだと、改めて気づかされます。

説明を聞きながら会場のスクリーンを見ていただけなのに、宇宙を旅してきた気分です。
ぴぃっちゃがま、てぃんぬ ぱてぃがみ(ちょっと、空の果てまで)。さらりと言ってしまいたい。
隊員B(本村)は里帰りしたとき、よく来間島の展望台まで夜空を眺めに行くのですが、次回の帰省の折には、心して見上げてみようと思います。宇宙の端っこも見えそうな気がします(もちろん裸眼で)。

朗報です! このMitakaのプログラム、4D2U(国立天文台4次元宇宙プロジェクト)のサイトから無料でダウンロードできます(Windowsのみ)。

「Mitaka」(4次元宇宙プロジェクトのサイト内)
http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka

隊員B(本村)、早速、自宅パソコンに落としてインストールしてみました。快適です。あのスクリーンで見た映像が、うちのノートPCに!。
星の名前や説明などもいろいろ出てきて、だいっずうむっしどー(すごく面白いよー)。夜中にひとり、PCの中の宇宙を眺めては、思わず鼻息が荒くなっております。むふ~。

専門的なお話は、隊員A(宮国)の小さな脳みそでは理解しづらいところもありましたが、要は空間と時間の広がりを形に出来るってことなのですよね。

「時間と空間」をデザイン化するなんて想像すらしたことませんでした。それもあのような美しい形で。ガラス細工のような、尊い宇宙でございます。

私の心(妄想)に、優雅な光景が広がって行きます。
 ティンナ カンヌドゥ ナガンビゥーパッズ(天に神様は横たわっていらっしゃるんじゃないかな)

そのイメージをエッジのきいたデザインで具現化をするなんて、やっぱり頭の良い人たちって、理解を超えております。
でも、たぶん、宮古のプリミティブもあちら側からしたら、理解不可なのかもしれません。
なんせ天に向かって「下さい!下さい!」と祈るばっかりですから(これは、来月の第3回で詳しくレポートします)。

続けて、第二部の文化人類学者、で考古学者の後藤明先生のお話を拝聴する事ができました。
題して「古代の宇宙観」。
宮古島に少しずつ近くなって参りました。マクロの話がミクロに近づいていく瞬間でした。
講演の中に出てくるさまざまな国の宇宙観や世界観をプロジェクターに大写しの図形を見るたびに、現代人と古代人の生死への観念の違いに圧倒させられました。
でも、不思議なことに、強烈な違和感があるわけではなかったのです。そして「宇宙=時空」という言葉は、現代よりも古代の方がフィットするような気すらしました。

「海は宇宙 島は星」講演のサブタイトルです。とてもロマンチックです。
前回も書きましたが、南洋の海人たちが編み出した、教育システム「スターチャート」のお話が印象的でした。
「砂浜などに貝殻で作られたスターチャートを航海者は覚え、自由自在に海を渡り歩く。加えて、波のうねり、月、風、動物を使って航海する」

杞憂ですが、「星の位置を体に叩き込まないと痛い目に合うのでは?」と心配してしまいます。何せ自分の手の関節などを使って、星の位置や角度を測るのですから。
自分の体が星の地図そのものなのです。なんという宇宙との一体感でしょうか。現代人はさまざまな機器を便利に駆使しているかもしれませんが、機器が壊れてしまったら?と、思うと、古代に軍配が上がります。
いえ、もしかしたら、最新機器よりも優秀なシステムなのかもしれません。忘れてしまう事があったとしても壊れることはなさそうです。頭だけで考えるのではなく、身体的感性をフルに生かすのですから、忘れかけてもすぐに思い出せそうです。

さらに古代の人達は「火星と金星が不規則な運行をしている」ことを知っていました。その運行の不規則さを物語る神話の説明もありました。
スターチャートを学ぶときにはストーリーは不可欠。星々ひとつひとつのお話が作られ、語り継がれるのです。そして、その星の神話や民話のなかには人々が生き生きと描かれています。
その人々は遠い存在ではなく、身近で感情豊かなご先祖さまらしき雰囲気をたずさえています。それは彼らが考えるイラストレーションであらわした世界観も同じです。
それは、そのスターチャートを学ぶ人や教える人が住む現在に向かって、その星の神話を時間をこえて自分たちまで引き寄せているような気がします。
また物語が感情の坩堝なので、トラブルチックな話も親近感を与えます。彼らは主人公たちと共感し、まさに時空をこえて、当たり前のようにともに生きてるのです。
そこには、地上の現実とは違う、空と海とともに生きたご先祖さまから繋がった自分を意識するのではないでしょうか?。

宮古でも古代の話がまるで現在の親戚のように語られる節があります。それは特にユタ関係では顕著な気がします。
例えば、神様と宮古でいうと、カン。ご先祖さまのこともカン。仏様とは呼びません。その神話に出てくる人々も、宮古で言う「カン」に近い印象を受けました。

宮古でユタの家を訪れる時は、たいてい病気、離別など大きな悩みがあった時。まさに個人の人生ターニングポイント。
どうにもならない現状の解決方法は、ユタの家を訪れて、ユタを通して先祖から言葉ももらう、というのがほとんどだと思います。
少なからず、自分は必ずご先祖と繋がっていることを認識させられるわけです。
なので、死んだ肉親とは、あの世どころか、夢うつつにでも会えるかもしれない・・・と本気で思っている宮古人の世界観によく似ています。
スターチャートの周辺の人々も精神の根幹が古代から繋がっていること。そのアイデンティティはきっと宮古より揺るがないものなのかもしれません。
古代の人々は、現代人が忘れかけた真の自由に生きたのではないかとまで妄想します。

話がそれにそれてしまいましたが、辺境の生まれである宮古人の私たちの目線からは、古代の人達のその世界観は、案外しっくりと馴染む興味深いお話でした。
講演の内容が深すぎて、書き足りない事も多くあります。ですが、宇宙の広がりの無限大さと、人が歴史をつくっていくうえでの情感や感受性にノックアウトされた一夜でした。       

◆科学と芸術の集い 『宇宙とヒトをつなぐもの』 -古代~最新の宇宙図と南島の神歌・古謡-
2010年1月17日(日) 日経ホール
http://www.epiphanyworks.net/saa/
[宇宙とヒトをつなぐもの-スペシャルレポート1-]
http://akmiyako.ti-da.net/e2741805.html

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宮国優子(みやぐに・ゆうこ)
1971年生まれ。旧平良市下里で生まれ育つ→アメリカ遊学→時代劇制作会社→脚本家事務所→フリー。東京で宮古毎日新聞嘱託記者。書籍のライティング・企画編集・取材・インタビュー・書評・コラム・コメント・出演・コピーライティング・映像企画制作・ナレーション原稿まで、何をやってるか本人もわかっておりません。島のまっちゃ(小売店)のように細々とこなす日々です。何はともあれ、宮古病患者を増やすべく日々啓蒙活動中。宮古島関連では「読めば宮古」 「書けば宮古」(ボーダーインク)の編著者・さいが族酋長。他にも『沖縄の島遊び』(JTB出版) 『島へ』(海風社)など多数。宮古島方言メルマガ「くまから・かまから」ライター。「東京の沖縄人」 新垣譲著(ボーダーインク)では、何故かインタビューされてます(若すぎて、アホ丸出し・・・)。
・あららがまパラダイスコラム『宮国優子の思えば宮古』(あんちーかんちー連載中)
・Official Blog 『宮国優子の寝ても覚めても宮古島!!』

本村佳世(もとむら・かよ)
1979年宮古島平良市(現・宮古島市)生まれ。生粋の市内っふぁ(市内っ子)。
平良中卒業後、沖縄本島の高校→千葉の私立大と進学し、卒業後は東京で就職。
社会人2年目ごろに刊行された『読めば宮古』を読んで、自分の中に長年眠っていた宮古人の血が目覚めたらしい。「私も宮古のことを何かやりたい!」と思い立ち、いろいろ迷ったあげく約3年後に宮古方言について調べ始めたころ、宮国優子さん(酋長)にmixiで捕獲(ヘッドハンティング?)される。その後、2006年に宮古方言研究のブログ『あっがいたんでぃ!』を立ち上げる(最近更新をサボっていますが・・・)。翌2007年からは宮古方言メルマガ「くまから・かまから」のライター。宮古方言が話せる人を増やして、昔のおじぃ・おばぁたちみたいに方言だけでおしゃべりするのが将来の夢です。
・宮古方言研究Blog 『あっがいたんでぃ!』

(文:宮国優子+本村佳世 写真+協力:エピファニーワークス 編集:モリヤダイスケ)
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