reef sound -来間島歳時記- №011

あんちーかんちー編集室

2011年02月04日 09:00


旧暦のお正月を迎えた離島の離島、来間島でひょんなことから農家の嫁になった砂川葉子が今月ものんびりとつぶやきます。南国の島の冬の寒さについてと、そんな冬のささやかなお楽しみについて。さぁてどんなつぶやきなのか、ちょっと耳を傾けてみましょう・・・。

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今年は全国的に寒さが厳しく雪も多いようで、ここ宮古・来間島も例年より寒いように感じています。クリスマスあたりから荒れた天気が続き正月も底冷えするほどに寒く、そのあとも雨がちな天気が続き、空は分厚い雲におおわれて太陽は閉ざされたまま。こうも悪天候が続き、お日様がのめないの日々は、農家にとっては苦しい日々となります。

一番はなんといってもお日様が照ってくれないと、丹精込めて作っている作物が日照不足で元気がなくなってしまうことです。まして本来は夏の作物のごうらなどは寒さにはすこぶる弱く、ハウスの中とはいえごうらの花も蕾も寒さで縮こまっています。それでも太陽が一瞬でも顔を覗かせれると、ごうらも太陽に向かって一心に蔓を伸ばしているのを感じます。丸まった背筋が伸びるように、太陽を浴びると人も作物も元気になるような気がしますよね。

先ほどから寒い寒いと云っておりますが島では、もう16度くらいで寒ーいと叫んじゃいます。13度なんて外に出ませんよ。10度きっちゃったら魚が仮死状態で浮かんできますよ。内地の感覚だとこの程度の気温なら小春日和って感じで、そんなに寒いわけないじゃんって感じでしょうが、島の冬は意外にも寒いんですよ。

理由は風。新北風に始まり二月風廻りまで、冬場になると吹き始める強い北寄りの季節風です。特に来間島なんて吹きっさらしさね。もう、もう、風がとにかく冷たくて刺すようなくらい。風速1メートル(m/s)で体感体が1℃さがるので、例えば気温が18度あったとしても、風速が15メートル(冬場の強風は軽くこのくらい吹きます)吹けば、体に感じる気温は実に3度という計算になります。どうです?それなりに島の冬も寒いでしょ!。

寒いことを宮古口では「ピシーピシー」と云うのですが、吹きすさぶ風の音から来ているような気がします。なんかいかにも寒そうな気がしませんか?。そんなピシーピシーな日があるかと思えば、夏のように暑い日もあったりして、寒暖の差が激しいのが島の冬の特長です。私はこの激しい寒暖の差に体がついていかなくて体調悪くしたりすることもあります。
こんな時に我が家で心がけてる健康法は、やはり旬の物を食べると云うことでしょう。冬が旬の島の食べ物はたくさんたくさんあります。秋口に植えた大根や人参や、菜っ葉などが山のように採れ、島らっきょや島にんにくも収穫が始まる頃で、冬場は野菜に困らずありがたいところです。

私が冬の味覚でもっとも愛してやまないのは、食べるとなんだか力がみなぎるのを感じる海の幸、サザエです。冬、島の人はこうした海の幸を求めて真夜中の海に繰り出すのだ。特に12月最初の大潮は満月だから、リーフが月明かりに照らされて獲物が探しやすいこともあり、この日を狙って海へとやって来る人が多くいます。不思議なことに、日中は大荒れの天気であっても、潮が引いて干潮に近づく時間となるとピタリと風が凪ぎ、絶好の真夜中の潮干狩り日和となることが多いのです。

採った獲物を入れる肥料袋で作ったお手製のマイバックと、懐中電灯を携えて海に向かう。潮の引いた夜の海は煌々と輝く月明かりに照らされ、音もなく静まり返って怖いくらい。すでに先客の懐中電灯の明かりがひとつふたつと遠くに揺れている。リーフへと降りて細心の注意を払いながら潮溜まりをひとつひとつのぞき込んではサザエを探す。懐中電灯に照らされた夜の海は、吸い込まれてしまいそうなほどに透明で綺麗なのだ。

コブシメを狙って竿を振る青年、ウェットスーツに身を包み海に潜る人、それぞれに獲物を求める人で真夜中の海はちょっとした賑わいだ。そしてお互いの成果を見せたり、逃した獲物の大きさを語ったり、月明かりの下で皆の笑顔が輝いてる。昼間は畑仕事に精を出し、ひと眠りしてから夜中に起きて海へと来るのだから、みんな大概タヤだなあと思う(タヤ:宮古口でタフネスのこと)。

何年か前の話だけど、こんな真夜中の海で独り暮らしのオバアと出逢って大変驚いたことがある。だってリーフに来るまでは、真っ暗な道を10分ほど歩いてから、ちょっとした崖のような所を越えなくてはたどりつけないのに、70も越えたオバアがたったひとりで来たというのだからホントに驚いた。だけど、きっとこれがオバアの元気の秘訣なのだと思う。
わざわざ真夜中に海へと繰りだすなんて面倒じゃない?、買えば済むんじゃない?という意見もあるだろうけれど、やはりこの真夜中の潮干狩りは島の人たちにとって厳しい冬の楽しみなのだ。

この数年、島の寒さにノックアウトされてしまっている私は行ってないけれど、海大好きな徳さんは毎年必ず真夜中の潮干狩りに出かけ、マイバックに海の幸をいっぱいにして持って帰って来てくれる。この冬も徳さんが採ってきたサザエを壷焼きにしたり、タカセガイを茹でたりして舌鼓をうちました。
海の幸で英気を養ったので、今年の冬もまた家族みんな、寒さに負けず風邪など引かずに元気に過ごしたいと思います!

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砂川葉子(すなかわようこ)
1975年生まれ 岐阜県出身。
2000年に宮古・来間島へ来島。縁あって農家の「嫁」となり、徳さん(ダンナ)、娘(4歳)、息子(2歳)の4人で力をあわせ、のんびり楽しく島に根付いた暮らしをしています。
徳さん(ダンナ)
生まれも育ちも来間島のダンナは、良くいえばマイペース。明日、地球が滅亡するっと世界中がパニックになっていても、ふらっとひとりで釣り(特にイカ釣りに熱中)に出かけてしまうような人。

「来間島・徳さんちのごうら畑」
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(文+写真:砂川葉子 編集:モリヤダイスケ)
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