川満集落 [島AP×島AP 010]

あんちーかんちー編集室

2009年08月14日 09:00


のんびりと島の“字”を訪ねる散歩の旅。ローカルにこだわって島時間で楽しむ旅を提案する、「島AP×島AP」が今回訪れた集落は下地地区の“字”川満です。
与那覇湾に面したサトウキビ畑の中に位置する川満は、陸と海に囲まれたのどかな集落。初夏の野外音楽イベント「美ぎ島ミュージックコンベンション」が行われる地区としても注目されています。さて、どんな散歩旅になるでしょうか。

※地図をクリックすると大きくなります。地図を広げてお楽しみ下さい。
防波堤に囲まれた川満漁港の北側からスタート。駐車スペースもあり、のんびりと釣を楽しむ人も見られる地域の憩いの場所でもあります。それでは集落に向かって散歩旅を始めましょう。
最初に現われたのは、漁港のすぐ脇の茂みにあるスゥーフツ御嶽でした。標榜がなければ気づかないくらいひっそりとしてます。防波堤部分にかけて埋め立てが行われているので、元々の海岸線だったと思われます。
漁港エリアから抜け出すと、立派な農道が横切り、北側にはサトウキビ畑が広がっています。畑の脇にハイビスカスの生垣が日差しの中で揺れていました。
緩い緩い登りを進んでゆくと、住宅が立ち並んでいます。集落を縦断する国道390号線に出る手前に、「雪塩ちんすこう」で有名な宮古島南風堂があります(といっても、ここはオフィスなので販売はお土産店でどうぞ・・・)。
国道390号線を渡るとペンション湧水家(わくみや)が見えてきました。この宿の前は自動販売機が並んでいることもあって、下地線(国道390号線)を行く車がジュースやタバコを買う、ワンストップポイントにもなっています。
湧水家の本館と別館の間を、さらに集落の奥へと進みます。右手は住宅、左手はサトウキビ畑と好対照な風景が広がっています。やがて左手に一本と道標がありました。「ミズマ御嶽遺跡」と書いてあります。御嶽といえば古くから尊まれ敬われ、現代に至るまで守り続けられているイメージがありますが、御嶽の遺跡というのもあることにちょっと驚きました。そんな脇には「島AP」ではお約束のように出てくる、立派な古井戸が鎮座してました。
人の営みが見られる家々が立ち並んでいるので、大きな集落に思えましたが人家がかなり密集しているようで、雰囲気より集落は広くはなく、東はずれのサトウキビ畑が見えて来たので、車一台がやっと通れるような細い集落道を曲がって、南に進路を変えてみました。
緑の多い集落の家々の間を抜けて、集落を横断する県道200号川満山中線へと出ました。200号なんてとてもキリのいい県道番号ですが、3キロちょっとしかない短い県道(島内では3番目に短い)だったりします。そんな県道の道端には、いかにも南国らしい椰子の並木が茂っていたり、向かい庭先にはバンシルー(グアバ)が実っていました。
県道を南に進むと「日用品・雑貨・冷し物」の看板を掲げた、小さな商店「まるみ家」がありました。真昼の暑い日差しの中では冷やし物の文字はなかなか嬉しいです。

県道を挟んだ「まるみ家」の向かいには、「川満構造改善センター」という凄い名前の集落センターがありました。玄関のガラス戸から中を覗き込んでみると、トロフィーや賞状がずらりと並んでいます。
芝生の庭の隅に、少し傾いた水準点の立て札を見つけ、近づいてみると石の蓋に刻まれた「琉球政府」の文字を発見!。
集落センターの脇を今度は北に向かって進みます。庭先からあふれるようにブーゲンビレアが咲き乱れたお家があったり、門柱がわりに入口に植えられた木からぶら下がった水字貝があったり、どことなく美容室風な入口をしたドアのある家があったりと、気の向くままにふらりと路地を歩いて見ると、書き切れない小さな発見がいくつも出てきました。
気づいたら県道200号線に戻ってしまったので、県道を渡って集落の南側を探索してみることにします。早速見つけたのは、元民家のトイレ(昔はトイレが別建てだった)と、古井戸に這うように伸びているドラゴンフルーツの花(つぼみ)でした。ぱっと見はただの荒地ですが、どうやら畑のようでした。
県道を「まるみ家」の角まで戻って、歩道も設置された広い道へと進んでみます。このあたり(県道より南側)は同じ川満集落にありながら、どこか新しい区画の匂いがします。理由としては北側のエリアに比べて区画が直線的に揃っているから。そんな一角にこんもりと茂った福木の並木がありました。成長が決して早くない福木がこれだけ育っているということは、嗅ぎつけた匂いは間違いだったかも・・・。
やがて人家が切れ、集落の南端に到達。その先は立派な道路とサトウキビ畑が続いていました。
「かわみつ農園」と書かれた小さな看板を掲げた家がありました。その先へ進んで見ると、尖った印象的なシルエットをしたアロエが植えられた畑が出てきました。周囲を見てみるといくつかアロエ畑があり、見慣れないせいかどことなく不思議な感じがします。
集落の南側の探索を終え、またまた県道200号線へと戻って、県道の起点となる国道との交差点へ向かいます。
川満の集落内には信号があります。さすがに国道が集落を貫いているだけのことはありますが、近年取り付けられたひとつ目の点滅式です(横方向が国道390号線)。
その信号のある交差点の隅に怪しい茂みがありました。見れば古井戸があります。もう少しよく観察してみると、モンステラやクワズイモが生い茂る部分が一段低くなっています。今は路傍の片隅で眠る名もなき遺構にすぎませんが、もしかしたら元々は縦穴式の井戸ではなく、ここは水をたたえた湧水池だったのかもしれません。
今度は国道を北(平良方向)に向かって歩いてみましょう。やはり目を引くのは路肩に建つ、宮古島オリジナルの距離標でしょう。島内の国道の起点である保良からと、終点の平良(港)までの距離も書かれていますが、なんといってもその脇の「アグガパナ ドゥスガパナ」のみゃーくふつ(宮古口)が宮古らしさを醸し出しています。 意訳:「同期生の華 友達の花形」
続いて見えてきたのは入口の脇に小さなポストが建つ商店(集落内で唯一の郵便ポストでした)と、一日数本のバスがやって来る「川満」のバス停。国道とはいえやはりローカル色が強いです。
湧泉家まで国道を北上したところで、集落の西側に分け入りました。すると道の先に青い海が飛び込んできました。さすが海が近い集落です。
集落の東側は道幅の細い緩く曲った路地がいく筋もありました。どことなく漁港の狭い街並みを思わせますが、緑が濃くあくまでも農村の趣きです。そんな細い路地を抜けたところに、一本だけ道端に福木が残っていました。
さらに路地を進んでゆくと、家を取り囲むように見事な福木並木が現われました。日差しの中から福木が生む木陰に飛び込むと、吹き抜ける風がとても涼しく感じられました。
川満集落の南端には、島尻と並んで宮古島では珍しいマングローブの林があります。国道脇の駐車場そばにはウプカー(大川)と呼ばれる湧水があり、マングローブ林の中を観察しながら散策出来る遊歩道も設置されていますが、訪れたこの日は残念ながら、高潮(異常潮位)で木道以外はどこもかしこも水没していました。
マングローブの遊歩道を抜けて、スタート地点の漁港へと戻り、今回の散歩旅はようやくゴールとなりました。周囲をサトウキビ畑に囲まれ、すぐ近くには与那覇湾に面した漁港があり、国道や県道も通る川満は、とても変化に富んだ小さな発見をたくさん見つけることができ、島APならではの見どころ満載の旅が楽しめるエリアでした。

※すべての集落は島の方々が生活を営んでいる大切な場所です。集落を散策する場合には、必ずマナーを守って楽しみましょう。

(文+写真+編集:モリヤダイスケ イラスト地図製作:山田光)
関連記事