今や入手の難しさから幻のラー油と呼ばれるようにまでなった、辺銀食堂の「石垣島ラー油」が先駆けを作り出し、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」の登場で、空前の「食べるラー油」ブームとなっています。ハンバーガーやおにぎりの具、ポテトチップスといった商品まで展開され、瞬く間に「食べるラー油」は新たな調味料・食材として市民権を得てしまいました。全国各地でご当地ラー油がさまざまに誕生し、まさに「ラー油戦国時代」の様相を呈しています。このブームを牽引してきた激戦区の沖縄系ラー油に、宮古島からもそんな“いくさ”に名乗りをあげる「食べるラー油」がいろいろと出てきたので、利きラー油をして見ました。
ラー油。漢字では「辣油」と書き、唐辛子などの香辛料を油で加熱し、辛味成分を抽出した中華料理には欠かせない調味料です。ラー油そのものの作り方は意外と簡単で、唐辛子を油で熱して辛味を油に抽出させればいいだけなので、手軽に自家製のラー油を楽しむことが出来ます(
沖縄食材で“食べるラー油”を作ってみよう!/沖縄WEBマガジンryuQ)。
しかし、昨今の「食べるラー油」はこの辛味成分の油の中に、工夫を凝らしたさまざまなモノを入れることで、新たな美味しさや食感、風味などを生み出して人気を博しているのです。それでは個性豊かな「島」のラー油たちを“辛辣”に?利きラー油をして見ましょう。
宮古島産のラー油のエントリーは3品。テスター役として桃ラーこと、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」と、元祖・沖縄系ラー油の王者、辺銀食堂の「石垣島ラー油」もあわせて試してみました。
南国食楽Zu 「南国手作り 食べるラー油」 120グラム 840円
島の食材を使ったジャムやドレッシング、キャラメルなど、新しい島の加工食品を意欲的に送り出している「南国食楽Zu」が、満を持して作り上げた食べるラー油。なんでも沖縄の中華料理の達人たちとともに商品開発を進め、島産・県産の素材にこだわった逸品なのだそうです。
瓶を開けた瞬間に香ってくるガーリックの風味がぐっと心を掴みます。固形分がかなり多いので少し油が濁って見えますが、オレンジかがった明るい赤に色づいています。他の追随を許さない圧倒的に具沢山な食べるラー油です。
使用している原材料は、食用菜種油、玉ねぎ、にんにく、パイナップル(沖縄県産)、醤油、みりん、かつお節(沖縄県産)、ザーサイ、豆板醤、酢、生姜(沖縄県産)、いりゴマ、ゴマ油、唐辛子、パプリカ、島唐辛子(沖縄県産)、塩(宮古島産)、ブラックペッパー、香辛料、ローズマリー抽出物となっています。
瓶からスプーンですくって見ると、本当に具がたっぷりなのが判ります。食してみると辛味はさほどなく、柔らかな具にはたっぷりとラー油が滲みこんでおり、どちらかといえば甘みさえ感じられる優しい味わいのラー油に仕上がっていました。
辛味値 ◆◇◇◇◇
[購入方法] 島内の空港やホテル売店、オキナワ宮古市場にて販売している、南国食楽Zuのオリジナルラベルのほか、キラクおおしろの「職人が作る食べるラー油」や、わしたショップの「匠のレシピ ラー油」としてOEM供給されています。
南国食楽Zu
http://www.zu-miyakojima.net/
ネット直販
http://nangokuzu.cart.fc2.com/ca11/35/p-r-s/
ZEN 「太陽のラー油」 100グラム 980円
ZENの食べるラー油をひと言でいい表わすなら、中華という枠を大きく超えた、まるでイタリアンのようなイメージがするラー油。理由はハーブを大胆に使用したラー油で、蓋を開けるとハーブの涼やかな香りと、ラー油特有の辛味ある香りが融合した不思議な香りが鼻腔を刺激します。具材の成分が溶けているせいか、瓶のままだと油は少し濁っていますが、すくい出してみると油はほんのりと緑色をしています。宮古島特産のフルーツであるマンゴーに、赤のアーウィン種と緑のキーツ種があるように、島のラー油にも緑があることに驚かされました。
使用している原材料は、サラダ油、ゴマ油、唐辛子、ウコン、にんにく、長命草、よもぎ、赤しそ、ミント、バジル、パセリ、生姜、ゴマ、山椒、調味料(アミノ酸等)なっています。
具材と一緒に食してみると、ほどよい辛味と具材の歯ざわりがなんともいえず、独特の風味の後味もすっきりと素晴らしく、中華や和食といった食べるラー油と相性のいいご飯もの系の食材だけでなく、オリーブオイルのように、そのままパンにつけて食べても美味しいラー油だとと感じさてくれました。
辛味値 ◆◆◆◇◇
[購入方法] 下里通りにあるZENの直売事務所で販売。また来月8日からは、伊勢丹限定の商品として販売されるそうです。
眞丑マート 「眞丑のラー油」 100グラム 850円
西里通りにある中華も得意とする、居酒屋の「眞丑」がプロデュースする本格ラー油。縦長のちょっと風変わりなボトル瓶入りで、赤黒くさが際立った赤ワインのような色の油の中に、非常に細かな具材が入っています。この細かさは具材というよりは、従来のラー油によくある香味具材をわざと瓶に残した「すな」入りのラー油のようなイメージにも見ええるので、食べるラー油とはちょっとコンセプトは異なっているかもしれません。
使用している原材料は、大豆油、島唐辛子(宮古島産)、一味唐辛子、タカの爪、ゴマ油、ウコン、生姜、長ネギ、山椒、八角、白ゴマとなっています。
ボトルの口を開けると香ばしさが漂い、早くなにかなかけて試したくなります。具材が細かいこともあり、しっかりと瓶を振ってからでないと、このラー油を100パーセント楽しめないところが難点といえば難点ですが、さらっとしたラー油をひと舐めしてみると、ビリっと辛味の刺激が舌に襲いかかってきました。
今回の利きラー油で一番の辛さでしたが、激しくあとに残るような辛さではないので、辛味好きなら食卓にひと瓶欲しいラー油といえそうです。
辛味値 ◆◆◆◆◇
[購入方法] 西里通りにある居酒屋「眞丑」店内にて取り扱い中(飲食をしなくても購入可能)。
島の居酒屋「眞丑」
宮古島市平良字西里231
0980-73-3339
営業時間 17:30?25:00
てぃーだ「おきなわグルメ巡り」にお店が紹介されています。
辺銀食堂 「石垣島ラー油」 100グラム 800円
食べるラー油の火付け役として、最も有名な沖縄系ラー油の元祖「石ラー」。実は今回の企画のために、石垣島まで行って購入してきました。ブーム以前は辺銀食堂に行けば、簡単に買うことができたのですが、現在は一日限定200個ほどの販売となっており、9時からの販売を前に、朝早くから整理券(おひとりさまひと瓶まで購入)をもらうために並び、整理券がないと購入することが出来ないという物凄い状態となっていました(余談ながら、離島桟橋のとある売店で石ラーがひと瓶1800円というプレミアをつけられて売られていたことにも驚いた)。
使用している原材料は、植物油、唐辛子、にんにく、黒豆、黒唐辛子、食塩、黒糖、山椒、ウコン、ヒハツモドキ、白ゴマとなっています。
紹介するまでもなく味や風味については知られているので、ここでは割愛しますが、後発のラー油がさまざまに工夫を凝らして強くオリジナリティを出していることもあって、初めて石ラーに触れた時のような驚きは少なく、スタンダードなラー油へと昇華しているように感じました。
辛味値 ◆◆◇◇◇
[購入方法] 石垣島のゆいロードにある辺銀食堂二階の「石垣島ラー油工房」他。
石垣島ラー油
http://penshoku.com/
桃屋 「辛そうで辛くない少し辛いラー油」 110グラム 358円(サンエー調べ)
発売されるやいなや人気が出て、あっという間に入手困難となった「桃ラー」。この商品を改めて食べて、さすが大メーカーが総力をあげて作った食べるラー油だ感じました。明らかに石ラーをはじめとするラー油製品を研究して作られ、万人受けするテイストに、強すぎないけどラー油と主張する辛さ、大量生産による設定価格の安さなど、島の食品加工会社が束になってもかなわない商品です。だって正直、コレ凄く好きですもの・・・。
使用している原材料は、食用なたね油、フライドガーリック、食用ゴマ油、唐辛子、フライドオニオン、唐辛子みそ、砂糖、食塩、パプリカ、すりゴマ、オニオンパウダー、粉末醤油、調味料(アミノ酸)、酸化防止剤(ビタミンE)となっています。
辛味値 ◆◇◇◇◇
[購入方法] スーパー・小売店の店頭にて販売。
桃屋
辛そうで辛くない少し辛いラー油
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島産の食べるラー油を利きラー油して見ましたが、気になった“島ラー”はありましたか?。暑い沖縄では辛いものが好まれることも多く、小粒でピリリと辛い島唐辛子なんて香辛料も島にはあるくらい。これを泡盛に漬け込んだ調味料「コーレグースー(高麗胡椒)」も親しまれている土地柄なので、そのうち「食べるクース」なんて出来るかもしれませんね。
まだまだ暑い島の夏、旨くて辛い「食べるラー油」で乗り切りましょう!。
(文+写真+編集:モリヤダイスケ)