島の地ビール屋 まずがーと物語 #006

あんちーかんちー編集室

2011年01月14日 09:00


隆起珊瑚礁の島・宮古島の美味しい水を使って醸造した、初の宮古島産の地ビール「とぅりば」を造り出した、「宮古島マイクロブルワリー」のマイスターTのほろ酔い?コラムは、第一弾の「エール」に続く島の地ビール、「ダーク」誕生について。それでは今月も「島の地ビール屋 まずがーと物語」はじまりです。

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明けましておめでとうございます。
今年も島の地ビール屋「宮古島マイクロブルワリー」をよろしくお願いいたします。昨年は島の地ビール屋としての貴重な経験を沢山させていただきました。今年はこの経験をもとに、ビールが一番美味しい夏のシーズンに向けて、よりいっそうの味の洗練とラインナップの充実に励みたいと思います。本年も「宮古島マイクロブルワリー」をご愛顧くださりますよう、よろしくお願い申し上げます。

そう云った意味で始まった2011年、まずがーと黒でも出してみますか!ってことで、仕込んでおいた黒ビールが、いよいよ今月の末には「とぅりば ダーク」としてお出しすることが出来ますので、みなさん宜しくね!。
ところでこの黒ビールって奴は、なんで色が黒いのかご存知ですか?。そもそもビールの色といえば黄金色ですが、その色も濃かったり薄かったり、はたまた琥珀色だったりもしていますよね。このビールの色はひと言で云うとモルト(麦芽)で決まるのです。あ、なんとなく判っちゃったって方は、気づかないふりをして続けて読んでね。
じゃあモルトってなに?。これもひと言で云うと「発芽した麦を乾燥させたもの」なんです。よくビールの宣伝文句などで「オールモルト」「麦芽100%」って聞くと思いますが、この「発芽した麦を乾燥させたもの」がビールの主原料になんです。麦に水を加えてやると芽が出てきます。と云ってもニョキニョキと出てくるまでは発芽させません。殻の中でほんのちょっと育つくらいで成長を止めますそれがモルトです。
だから、モルト=麦芽って云うんですね。この麦芽の生長を止めるためには熱を加えて乾燥をさせるのですが、なんでこんな中途半端なところで成長を止めるんだろう・・・って思いませんか?。
実は麦の殻の中には、芽が育つための養分となるデンプンがいっぱい詰まっています。でも、デンプンのままの状態では発酵しないのでアルコールにはならないのです。デンプンを分解して糖分を作り出さないと、発酵してアルコールはできません。そしてデンプンを分解するには酵素が必要になります。
麦は発芽すると自分の養分とするために、デンプンを分解するための酵素を自分で作り出すんです。すばらしい自然の摂理ですよね。麦芽の中にはデンプンとこれを分解する酵素が同居する、とても理にかなった原料になっているってことなんです。発見した人はすごいですよね。

さてさて、ようやくここからがビールの色の話になります。この麦芽の成長を止めるときの乾燥温度、これが色を左右する決め手だったんです(実際には色だけでなく、味や風味などにも様々に影響します)。低温でじっくり乾燥させると色の淡い麦芽となり、これを使ったビールも色の淡いものになります。高温で乾燥させると黒く焦げたモルトとなり、香ばしさや苦みのある原料となるのです。簡単に云ってしまえばコーヒー豆の焙煎と同じようなもんですかね。
この黒く焦げたモルトと淡い色のモルト、その中間くらいのモルトを色々な比率で混ぜあわせ、ビールの色や味は作られます。この比率は地ビール屋独自のレシピになりますから、それぞれの個性が出るところでもありますね。

ところで、これまでひと口に黒ビールと云ってきましたが、黒い色のビールで「スタウト」っていうのがあるんだけど、これも黒ビールだよねぇ・・・黒いもん。なんで黒ビールって云わないんだろう?って思いませんか。
ものの本によると黒ビールと呼んでいいのは、「シュバルツ」だけと書いてあります。ドイツ発祥の「シュバルツ」というタイプのビールのことで、「シュバルツ」はドイツ語で「黒い」という意味だとか。このタイプはラガー酵母(下面発酵酵母)という酵母を使ったもので、シャープでスッキリした味わいになります。当ブルワリーではエール酵母(上面発酵酵母)を使っており、「シュバルツ」とは違うタイプになります。で、なんて云うかと申しますと「スタウト」というタイプのビールになり、まったりした味わいになります。スタウトはアイルランドあたりで進化したもので、そのまた大元はイギリスで生まれた「ポーター」というビールになります。この「ポーター」はエールビールから進化したもので・・・えーっと、このまま話を続けると際限なく続けてしまいそうなので、今回はひとまずこの辺で(汗)。

ひと口にビールと云っても色々な種類があって、味もそれぞれです。「日本地ビール協会」では、発泡酒も含めビールの種類を85に分けているんだとか。ほんと沢山ありますよね。まぁ、専門的な用語ばかり使ってても分かりにくいので、私はズバっと黒ビールと云っています。ただ、「シュバルツ」には敬意をはらって当ブルワリーで販売する瓶ラベルには「ダーク」と表記いたしました。
今回仕込んだ黒ビールには、隠し味として宮古島の黒糖を混ぜています。だからちょっと違った味がするかなぁ・・・です。もし、この味は苦手だとか、ちょっと濃いかな、というお客様には、従来のコーラルエールとのハーフ&ハーフにすることも出来ますので、興味ある方は是非お試しあれ!。

[関連資料]
日本地ビール協会
http://www.beertaster.org/
ベアードビール~日本の地ビールの第一人者的な方。
http://bairdbeer.com/
アサヒビールモルト株式会社~麦芽を販売する会社。さまざまな色の麦芽の画像があります。
http://www.asahibeermalt.co.jp/malt/menu.html

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[筆者紹介]
マイスターT
将来、住みたいと思っていた宮古島へ、ひょんなことからハマってしまったビールを造るために、46歳の若さで仕事を辞めて、愛妻と愛犬とビールタンクと一緒にやって来てしまった、ちょっと無謀な男。
車・バイク・ボート・釣りが好きなのですが、島ではとりあえず車とバイクはおあずけ。ひとまずは島の地ビールが売れたら、マイ・ボートで思う存分に釣りへ出ることが、今の夢。
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[Miyakojima Micro Brewery]
所在地:沖縄県宮古島市平良久貝703-3 地図はこちら
TEL:0980-79-0059
Blog:宮古島マイクロブルワリーのマイクロな一歩
http://mmb.ti-da.net/
PUB業時間
4月~10月 15:00~20:00(LO.19:30)
11月~3月 15:00~19:00(LO.18:30)
定休日/火・水・木曜日

(文:マイスターT@Miyakojima Micro Brewery 編集+写真:モリヤダイスケ)
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