島の地ビール屋 まずがーと物語 #008

あんちーかんちー編集室

2011年03月18日 09:00


南の島の珊瑚の水を使って「Miyakojima Micro Brewery」が造りあげた、宮古島で生まれた初めての地ビール「とぅりば」には、島の地ビール屋・マイスターTの情熱とこだわりがいっぱい詰まっています。今回はそんなマイスターTが師匠と仰ぐお方のお話。それでは「まずがーと」始めましょうか・・・。

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少しずつ春の兆しが見え始めてきた宮古島・・・ですが、何なんでしょうねぇ、この気温変化の激しさは。暖かくなってきたなぁ・・・っと思えばズドンと寒くなったり、まるで「ちやほやの法則」みたいですね。
ま、それはさておき、もう来月は4月。私が宮古島に移住してまる3年になるんです。なんだか今この島に居る自分が不思議ですね。しかもビールを製造してるなんて!。

私とビール造りの出逢いはインターネットから。たまたまそこで見つけたビール造りキットに気を引かれ、何気に購入してみました。そして遊び心から造ってみたんです。これにはハマリましたね。もうまさに「造れちゃうんだ?!」って感じです。
1回の仕込量は10リットル程度。モルトエキス(麦汁:水あめみたいなもの)というものを鍋で湯に溶かし、灯油とか水とか入れる容器と同じような容器に注ぎ入れて、20℃くらいまで冷やしたらビール酵母を投入。あとはひたすら温度を一定にして一週間ほど発酵させて、少量の砂糖と一緒に瓶詰め。更に3週間ほど置いたら出来上がり、後は冷やして美味しくいただくだけです。
でも、でも。物足りないんです・・・これじゃ、もう満足できないんです!。日本で合法的にビールを造るには、酒造免許を得るか、アルコール分を1パーセント未満で造らなければならないのですもの・・・なんてこったぁ!!!。

そんな折、新聞でこんな記事を見つけたんです。
「夢塾・ビール醸造所の主」
東京・池袋から東武東上線の急行で1時間あまり。外秩父の山々に囲まれた静かな町で馬場さん夫妻は小さな小さなブルワリーを開く・・・・。

この記事を見つけたのが2007年4月1日。
当時、住んでいた練馬から関越道を使えば1時間ほどで着く距離でもあり、どうしても私はこの馬場さんに逢いたくなってしまいました。翌月、いてもたってもいられず逢いに行ってしまったのです。馬場さんは大学の助教授という職の傍ら、農業にも精を出しておられ麦を作っていたのですが、その麦をなんとか有効に使いたいとビール造りを始められていたのでした。
馬場さん独学でビール作りを学び、ひとりでカナダまで醸造タンクを買い付けに行き、自分の畑で作った麦でビールを造っているのです。もう私の眼にはスーパーマンのように映りました。でも、会って話を聞いていると、物静かで真面目そうなおじさんなんです。その外見から受ける印象と違い、思い込んだら曲げない頑固さと、突き進んでいくパワーを持っているおじさんでした。この時、馬場さんからは、地ビール業の立上げについてのアドバイスを色々と伺い、 なんだか自分でもやってみようかと、闘志が湧き上がって来たのを覚えています。そう、私にとっては歴史的な出逢いをしてしまったのです。

その当時、馬場さんが営んでいた「雑穀工房マイクロブルワリー」は、4人も座ればいっぱいのカウンター席があるだけ。そして奥さんが自然酵母を使ったパンを作っていて・・・そう、まるで今の宮古島マイクロブルワリーとなんか似てますよね。馬場さんの影響をもろに受けているんです。自分では勝手にビール造りの師匠と決め込んでいますから!。

そして何度か仕込みの様子を見学させてもらったりして年が明けた2月、「知り合いの地ビール屋さんから、店を閉めるから設備を売りたいと言う話を聞いたよ」という話をいただき、その足でその地ビール屋さんに向かい、設備購入の仮契約をして来たのでした。
実はこの時、既に宮古島に移住すべく、会社を退職した直後だったので、願ってもないタイミングでの話だったのです・・・というか、どう考えてもフライング気味ですよね。人生の教訓ではないですけど、準備が整ってからって思っているとチャンスも来ないし、前に進まないものですよね。なにより早く宮古島に来たかったという思いがどんどんそうさせたのかもしれません。
それにしても高額な醸造設備、仮契約はかみさんに相談なしでやってしまいました。実は当時、趣味で乗っていた車を宮古島には持っていけないなぁ・・・と思っていたので、売ろうかどうか迷っていたのですが、その中古相場と同じくらいの言い値だったので、断腸の思いで車を売る決意をして設備購入の契約をしたのでした。その車、パブに来ていただけると分かりますよん。

そして2008年4月4日。めでたく宮古島市民となった訳ではありますが、馬場さんとの出逢い同様、宮古島に来るにあたって色々な人達との出逢いと手助けのおかげで、この宮古島マイクロブルワリーを立ち上げることができました。お世話になった皆様方、たんでぃがーたんでぃー!。

さあて、啓蟄(といっても宮古は暖かすぎて冬眠していないという噂もありますけどね)も過ぎ、みなさんのビール呑みたい虫もムズムズとしてきていることでしょう。今年はより味に磨きをかけて皆さんにご提供できるよう工夫をしていきますのでよろしくお願いいたします。

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[関連HP]
雑穀工房マイクロブルワリー
手作りビールキットのHP

[筆者紹介]
マイスターT
将来、住みたいと思っていた宮古島へ、ひょんなことからハマってしまったビールを造るために、46歳の若さで仕事を辞めて、愛妻と愛犬とビールタンクと一緒にやって来てしまった、ちょっと無謀な男。
車・バイク・ボート・釣りが好きなのですが、島ではとりあえず車とバイクはおあずけ。ひとまずは島の地ビールが売れたら、マイ・ボートで思う存分に釣りへ出ることが、今の夢。
※バックナンバーはコチラ

[Miyakojima Micro Brewery]
所在地:沖縄県宮古島市平良久貝703-3 地図はこちら
TEL:0980-79-0059
Blog:宮古島マイクロブルワリーのマイクロな一歩
http://mmb.ti-da.net/
PUB業時間
4月~10月 15:00~20:00(LO.19:30)
11月~3月 15:00~19:00(LO.18:30)
定休日/火・水・木曜日

(文+写真:マイスターT@Miyakojima Micro Brewery 編集+写真:モリヤダイスケ)
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