2010年12月03日
reef sound -来間島歳時記- №009
離島の離島、来間島の農家の嫁である砂川葉子がつぶやく今月のテーマは、農業を営むものとして気を揉むほどに不順な島の天気にあれこれ悩まされつつも、宮古口(みゃーくふつ)と歌を語ってくれました。どんなつぶやきか、耳を傾けてみましょう・・・。
※ ※ ※ ※
今年の宮古の秋はちょいと天候不順気味。10月末は季節外れの台風、11月は連日の長雨。10月中旬から下旬にかけて、ごうら(ゴーヤ)の植え付けを予定していた私たちは、予測のつかない天候に振り回され、毎朝、天気図を何度も見返しては、空とにらめっこする日々でした。雨が続けば島特有の赤土の畑はドロドロにぬかるんで歩くことも難儀になって作業に支障をきたすし、天候不良は日照不足になって生育の遅れも見受けられると、ひたすらにお天道様が恋しいのでした。
そんな気まぐれな秋の空とにらめっこの日々は、農家ではなかったはず。というのも秋の宮古はイベントが目白押しで、恨めしいほどに不順な空模様はイベント関係者の皆さんを一喜一憂させたのではないでしょうか。そんなひとつが宮古民俗芸能が一堂に会する秋の最大級のイベント「クイチャーフェスティバル」です。当初は11月7日(毎年11月第一日曜日に開催)に行われる予定でしたが、大雨の影響で残念ながら今年は中止となってしまいました。しかし、島民の熱い思いを受けて産業まつりとの併催という形で、急遽復活開催されることになりましたが、またもや降り続いた雨で会場のコンディションが不良となり、産業まつりともども開催が延期(11/21開催予定)となってしまいました。
三度目の正直として、12月5日に改めて開催される予定となった、クイチャーフェスティバルを待ち望んでいる方々はたくさんいることでしょう。宮古島のとある集落では日々クイチャーの練習を重ね、毎年クイチャーフェスティバルにかけているのだとか。それにしても開催の当日を迎えるまでは、もう少し空とにらめっこの日々が続きそうです。
実は島のこどもたち、来間っ子もクイチャーフェスティバルの方言替え歌部門に出場するのです!。方言替え歌は昨年のクイチャーフェスティバルでデモンストレーションが行われ、今回初めて開催される新しい部門なのです。そのせいか出場者は少なめですが、間違いなくこれは来年、再来年には出場者が増えると私は思ってます。何故なら方言替え歌はめちゃくちゃ楽しいんです。!面白いんです!。ホント、ハマりますよ、これ!。小さい頃、勝手に替え歌を作って遊びませんでしたか。それと同じなんです。ぜひとも、遊び感覚からトライしてみませんか(笑)。
来間っ子たちがクイチャーフェスティバルで唄う歌は、小さな子どもからお年寄りまで歌える誰もが知ってる曲ということで、童謡や唱歌から替え歌にてみることにしました。
いろいろ悩んで選んだ一曲は『メリーさんの羊』。来間にメリーさんはいないまでブジャーマ(おじさん)に換え、羊は身近な山羊(ピンザ)に置き換えて、タイトルを『ブジャーマのピンザ』としてみました。
この発想は小学生の男の子がひらめいたんですよ。私、心の底から関心してしまいましたよ。そして歌ってみると、またこれがしっくり来るんですよ。「ブジャーマのピンザ メェメェ ピンザ ブジャーマのピンザ」ってね!。歌ってみるとさらに楽しく笑えてきます。
『メリーさんの羊』はアメリカ民謡で、メリーさんが飼ってる可愛い羊が、ある日学校について来てしまい、それを見つけた生徒たちはおおはしゃぎ、先生は怒って羊さんを追い出してしまい、メリーさんは困ってしまって泣き出してしまうという内容の歌詞なのですが、この世界観はまさしく来間島にある光景そのものなんです。来間幼小中学校の前にはケンチャンおじさんと呼ばれる、「ブジャーマ」の山羊小屋があって、そこには三匹の山羊が飼われています。山羊たちは人なつっこいけどとってもボウチラでなのです。時々、山羊小屋を脱走して学校にへ侵入して来るのですよ。そのたびに生徒たちは大騒ぎ、先生は山羊を追いかけまわして大奮闘・・・っと『メリーさんの羊』にそっくりなので、島言葉の替え歌にしてもバッチリで面白く歌うえるのでした。
そこで調子に乗ってもう一曲、替え歌にチャレンジ!。
こんどは父兄たちが小学生時代に音楽の授業で習った、懐かしい歌というセレクトで『村まつり』が題材に決定。サビの部分の「どんどんひゃらら どんひゃらら」を、宮古民謡などで馴染みの「ニノヨイサッサッ ヒヤサッサッ」と置き換えてみると、これまたなんともぴったり。『村まつり』も『ブジャーマのピンザ』みたく来間島っぽい替え歌にしてみようと、島一番の祭りであるヤーマスウガンの雰囲気を取り込んで見ようと試みますが、「村の鎮主」、「治まる御代」、「宮の森」といった、うまく島の方言に置き換えられない歌詞が登場して四苦八苦。明らかに私だけでは、島言葉のボキャブラリーが足りないのだ。そこで思い切ってクイチャーフェスティバルの実行委員長であり、アイランダーアーティストでもある下地暁さんのスタジオを訪ね、替え歌のアドバイスをいただくと、曲や歌詞の全体的なイメージをさらに深めながら意訳してゆくと歌いやすくものが作れると導いてくれました。
さすが暁さん、プロです。さらりと紡ぎだしてくる宮古口が本当に美しいんですよ。
「村の鎮守の神様の~」というフレーズは「私たちの島をいつも守ってくださる神様」という思いをこめて、「バンタガ フィマヌ カンガナス」(私たちのいとおしい来間の神様よ)と云い換えたり、「トゥユマス」(豊かにする)、「トゥナガス」(響かせる)と韻を踏んだりと、とっても素敵な宮古口(みゃーくふつ)の替え歌が完成しました。
方言替え歌に挑戦して感じたのは、宮古口(みゃーくふつ)の奥深さです。『ブジャーマのピンザ』を製作するときに、「先生は怒り」をどう方言に直すかで悩んだんですよ。当初、「怒り」を「バタフサリ」と変えていたのです。「バタフサリ」の「バタ」とは「腹」、「フサリ」が「腐る」という意味で、直訳すると「腹が腐るほど怒っている」という感じ、日本語に意訳するならば「腸が煮えくり返る」といったところなんですが、先生が山羊の侵入に腸が煮えくり返るほど怒っているかと考えると、そうじゃないんですよね。となると、単に怒っているという感じなら「ウグリ」の方がニュアンス的に合うだろう、と考えて「シンシーヤ ウグリ」と言い換えました。
例えば「あがい」ってどういう意味?と聞かれても、説明するのは難しいのです。同じ単語なのに状況や発音の仕方ひとつで、意味合いさえも変化するという方言の奥の深さを感た私なのです。
そんな私の今のマイブームは、中学生の姪っ子と一緒になっての方言訳で、歌を聞けばついつい方言に置き換えようとしてしまいます。先日もふたりで『ビューティフルサンデー』の「すば すば すば 素晴らしいサンデー」の部分を、「ずみ ずみ ずみ ずみぎなサンデー」ってな具合にひと節、方言訳を作ってしまいました。
手軽な脳トレにもなるので、みなさんも試してみてくださいよ。そして来年のクイチャーフェスティバルの替え歌部門に出場してみませんか?。
砂川葉子(すなかわようこ)
1975年生まれ 岐阜県出身。
2000年に宮古・来間島へ来島。縁あって農家の「嫁」となり、徳さん(ダンナ)、娘(4歳)、息子(2歳)の4人で力をあわせ、のんびり楽しく島に根付いた暮らしをしています。
徳さん(ダンナ)
生まれも育ちも来間島のダンナは、良くいえばマイペース。明日、地球が滅亡するっと世界中がパニックになっていても、ふらっとひとりで釣り(特にイカ釣りに熱中)に出かけてしまうような人。
「来間島・徳さんちのごうら畑」
http://kurimajima.web.fc2.com/
「来間島・徳さんちのごうら畑」 てぃーだBlog
http://kurimagoura.ti-da.net/
◆バックナンバーはコチラ
(文+写真:砂川葉子 編集:モリヤダイスケ)
三度目の正直として、12月5日に改めて開催される予定となった、クイチャーフェスティバルを待ち望んでいる方々はたくさんいることでしょう。宮古島のとある集落では日々クイチャーの練習を重ね、毎年クイチャーフェスティバルにかけているのだとか。それにしても開催の当日を迎えるまでは、もう少し空とにらめっこの日々が続きそうです。
実は島のこどもたち、来間っ子もクイチャーフェスティバルの方言替え歌部門に出場するのです!。方言替え歌は昨年のクイチャーフェスティバルでデモンストレーションが行われ、今回初めて開催される新しい部門なのです。そのせいか出場者は少なめですが、間違いなくこれは来年、再来年には出場者が増えると私は思ってます。何故なら方言替え歌はめちゃくちゃ楽しいんです。!面白いんです!。ホント、ハマりますよ、これ!。小さい頃、勝手に替え歌を作って遊びませんでしたか。それと同じなんです。ぜひとも、遊び感覚からトライしてみませんか(笑)。
来間っ子たちがクイチャーフェスティバルで唄う歌は、小さな子どもからお年寄りまで歌える誰もが知ってる曲ということで、童謡や唱歌から替え歌にてみることにしました。
いろいろ悩んで選んだ一曲は『メリーさんの羊』。来間にメリーさんはいないまでブジャーマ(おじさん)に換え、羊は身近な山羊(ピンザ)に置き換えて、タイトルを『ブジャーマのピンザ』としてみました。
この発想は小学生の男の子がひらめいたんですよ。私、心の底から関心してしまいましたよ。そして歌ってみると、またこれがしっくり来るんですよ。「ブジャーマのピンザ メェメェ ピンザ ブジャーマのピンザ」ってね!。歌ってみるとさらに楽しく笑えてきます。
『メリーさんの羊』はアメリカ民謡で、メリーさんが飼ってる可愛い羊が、ある日学校について来てしまい、それを見つけた生徒たちはおおはしゃぎ、先生は怒って羊さんを追い出してしまい、メリーさんは困ってしまって泣き出してしまうという内容の歌詞なのですが、この世界観はまさしく来間島にある光景そのものなんです。来間幼小中学校の前にはケンチャンおじさんと呼ばれる、「ブジャーマ」の山羊小屋があって、そこには三匹の山羊が飼われています。山羊たちは人なつっこいけどとってもボウチラでなのです。時々、山羊小屋を脱走して学校にへ侵入して来るのですよ。そのたびに生徒たちは大騒ぎ、先生は山羊を追いかけまわして大奮闘・・・っと『メリーさんの羊』にそっくりなので、島言葉の替え歌にしてもバッチリで面白く歌うえるのでした。
そこで調子に乗ってもう一曲、替え歌にチャレンジ!。
こんどは父兄たちが小学生時代に音楽の授業で習った、懐かしい歌というセレクトで『村まつり』が題材に決定。サビの部分の「どんどんひゃらら どんひゃらら」を、宮古民謡などで馴染みの「ニノヨイサッサッ ヒヤサッサッ」と置き換えてみると、これまたなんともぴったり。『村まつり』も『ブジャーマのピンザ』みたく来間島っぽい替え歌にしてみようと、島一番の祭りであるヤーマスウガンの雰囲気を取り込んで見ようと試みますが、「村の鎮主」、「治まる御代」、「宮の森」といった、うまく島の方言に置き換えられない歌詞が登場して四苦八苦。明らかに私だけでは、島言葉のボキャブラリーが足りないのだ。そこで思い切ってクイチャーフェスティバルの実行委員長であり、アイランダーアーティストでもある下地暁さんのスタジオを訪ね、替え歌のアドバイスをいただくと、曲や歌詞の全体的なイメージをさらに深めながら意訳してゆくと歌いやすくものが作れると導いてくれました。
さすが暁さん、プロです。さらりと紡ぎだしてくる宮古口が本当に美しいんですよ。
「村の鎮守の神様の~」というフレーズは「私たちの島をいつも守ってくださる神様」という思いをこめて、「バンタガ フィマヌ カンガナス」(私たちのいとおしい来間の神様よ)と云い換えたり、「トゥユマス」(豊かにする)、「トゥナガス」(響かせる)と韻を踏んだりと、とっても素敵な宮古口(みゃーくふつ)の替え歌が完成しました。
方言替え歌に挑戦して感じたのは、宮古口(みゃーくふつ)の奥深さです。『ブジャーマのピンザ』を製作するときに、「先生は怒り」をどう方言に直すかで悩んだんですよ。当初、「怒り」を「バタフサリ」と変えていたのです。「バタフサリ」の「バタ」とは「腹」、「フサリ」が「腐る」という意味で、直訳すると「腹が腐るほど怒っている」という感じ、日本語に意訳するならば「腸が煮えくり返る」といったところなんですが、先生が山羊の侵入に腸が煮えくり返るほど怒っているかと考えると、そうじゃないんですよね。となると、単に怒っているという感じなら「ウグリ」の方がニュアンス的に合うだろう、と考えて「シンシーヤ ウグリ」と言い換えました。
例えば「あがい」ってどういう意味?と聞かれても、説明するのは難しいのです。同じ単語なのに状況や発音の仕方ひとつで、意味合いさえも変化するという方言の奥の深さを感た私なのです。
そんな私の今のマイブームは、中学生の姪っ子と一緒になっての方言訳で、歌を聞けばついつい方言に置き換えようとしてしまいます。先日もふたりで『ビューティフルサンデー』の「すば すば すば 素晴らしいサンデー」の部分を、「ずみ ずみ ずみ ずみぎなサンデー」ってな具合にひと節、方言訳を作ってしまいました。
手軽な脳トレにもなるので、みなさんも試してみてくださいよ。そして来年のクイチャーフェスティバルの替え歌部門に出場してみませんか?。
※ ※ ※ ※
砂川葉子(すなかわようこ)
1975年生まれ 岐阜県出身。
2000年に宮古・来間島へ来島。縁あって農家の「嫁」となり、徳さん(ダンナ)、娘(4歳)、息子(2歳)の4人で力をあわせ、のんびり楽しく島に根付いた暮らしをしています。
徳さん(ダンナ)
生まれも育ちも来間島のダンナは、良くいえばマイペース。明日、地球が滅亡するっと世界中がパニックになっていても、ふらっとひとりで釣り(特にイカ釣りに熱中)に出かけてしまうような人。
「来間島・徳さんちのごうら畑」
http://kurimajima.web.fc2.com/
「来間島・徳さんちのごうら畑」 てぃーだBlog
http://kurimagoura.ti-da.net/
◆バックナンバーはコチラ
(文+写真:砂川葉子 編集:モリヤダイスケ)
Posted by あんちーかんちー編集室 at 09:00│Comments(2)
│来間島歳時記
この記事へのコメント
葉子さん こんにちは
「リーフサウンド」楽しく読んでいますよ♪
替え歌。 アイランダーアーティストの下地さんの言葉の選び方はとても
素敵ですね。
まさに「紡ぎ出す」という表現どおり。
葉子さんが紹介してくれる来間島の日常
わかりやすくて 感心する事が多々あります
やっぱり葉子さんは何らかの使命を持ってるんだろうなぁ と思ったよ
よく、『宮古に呼ばれた』っていう言い方をするじゃない?
気になっている事があって・・・
『癒しの島』と、もてはやされることが多い宮古だけど
中でも「ムスヌン浜」は『ゼロ磁場』だと聞きます。
(他にもそういう所はあるのでしょうが)
色々調べたけどわからなくて・・・
何かご存知でしたら いつか教えて下さい。
「リーフサウンド」楽しく読んでいますよ♪
替え歌。 アイランダーアーティストの下地さんの言葉の選び方はとても
素敵ですね。
まさに「紡ぎ出す」という表現どおり。
葉子さんが紹介してくれる来間島の日常
わかりやすくて 感心する事が多々あります
やっぱり葉子さんは何らかの使命を持ってるんだろうなぁ と思ったよ
よく、『宮古に呼ばれた』っていう言い方をするじゃない?
気になっている事があって・・・
『癒しの島』と、もてはやされることが多い宮古だけど
中でも「ムスヌン浜」は『ゼロ磁場』だと聞きます。
(他にもそういう所はあるのでしょうが)
色々調べたけどわからなくて・・・
何かご存知でしたら いつか教えて下さい。
Posted by レイコ at 2010年12月03日 09:39
こんばんは、レイコさん。
いつもご愛読いただきまして、ありがとうございます。
タンディガータンディー!
ムスヌン浜は、ゼロ磁場なのですか?って、ゼロ磁場、という言葉も実は初めて知りました。すいません、勉強不足でf(^^;一応、ネットで勉強してみましたが、難しいですね。
うーん。どうなんでしょうね。
分かりません。
ごめんなさいね。
ただ、島の人にとってはムシバライウガンという神事を行う大切な場所ですし、
私にとっても縁深く、すごく大切な場所ですし、砂川家のお弁当スポットでもあります。
ゼロ磁場かどうか分かりませんが、
来間には、そんなような場所はいくつかあると思いますよ。
いつか、そんなお話もしましょうね。
いつもご愛読いただきまして、ありがとうございます。
タンディガータンディー!
ムスヌン浜は、ゼロ磁場なのですか?って、ゼロ磁場、という言葉も実は初めて知りました。すいません、勉強不足でf(^^;一応、ネットで勉強してみましたが、難しいですね。
うーん。どうなんでしょうね。
分かりません。
ごめんなさいね。
ただ、島の人にとってはムシバライウガンという神事を行う大切な場所ですし、
私にとっても縁深く、すごく大切な場所ですし、砂川家のお弁当スポットでもあります。
ゼロ磁場かどうか分かりませんが、
来間には、そんなような場所はいくつかあると思いますよ。
いつか、そんなお話もしましょうね。
Posted by 徳さんちのごうら畑 at 2010年12月06日 18:13