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2010年11月05日

reef sound -来間島歳時記- №008

reef sound -来間島歳時記- №008
大地と語らう来間島の農家の嫁である砂川葉子の今月のつぶやきは、秋の集落行事がひと段落したところにやって来る、来間最大の祭祀「ヤーマス・プナカ」について、葉っぱ流に色々とあれこれと語ってみまたのでした。

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運動会に敬老会と週末毎に行われた地域行事がひと段落した9月末。ほっとしたのも束の間、旧暦九月甲午(きのえうま)の日に行われるヤーマス・プナカ(御願/ウガン)が待ち構えていたのでした(今年は10月11~12日)。
ヤーマス・プナカとは来間に伝わる島を救った三兄弟の伝説をもとにした、来間島で行われる最大の祭祀で宮古島市指定の無形民俗文化財でもあります。
reef sound -来間島歳時記- №008
長男家をスムリャー、次男家をウプヤー、三男家をヤーマシャーといい、来間島の人は誰もがこの三つのモーヤー(本家)のいずれかをルーツとする、三兄弟の血を引く末裔なのである。ヤーマス・プナカが行われる際は、それぞれのモーヤー(本家)に集って一族で神事を執り行ないます。そのために日ごろは郷里を離れて暮らす人たちも、この日のために全国各地から島へと戻って来るので、島の人口がいつもの2~3倍に膨れ上がり、いつもにも増して賑やかなお祭りモードで盛り上げてくれるのです。ちなみに砂川家は次男家のウプヤーがモーヤー(本家)です。


reef sound -来間島歳時記- №008お祭りの起源でもある来間島を救った三兄弟の伝説(昔話)は、島の誰もが知っている言い伝えです。
私が島に来たばかりの頃。徳さんはすぐに血縁の長老のオバァ(当時88歳、今も健在で99歳になります)の家に連れて行き、三兄弟の昔話を聞かせてやってくれと頼んだ。
オバァは深々と頷くと、何故かご飯をよそいだし、金ちゃんヌードルにお湯を注ぎ始める。おもむろに「食べれー」と。島のオバァは若い人を見ると何かと食べさせたがるものなのです。
ひとしき食べ終わって熱いさんぴん茶を飲んでいた私を、黙ってニコニコと見つめていたオバァは、唐突に方言でペラペラと徳さんがお願いした昔話を語り始めたのでした。

島言葉の判らない私に、徳さんが通訳してくれたオバァの語る三兄弟のお話は、とてもとても長い物語でしたので、少しかいつまんで・・・。
子宝に恵まれなかった宮古島は川満の喜佐真按司(キサマアジ)に待望の子どもが生まれたところから始まり、成長したその娘が年頃になったある日、東から昇る太陽の強い光に気を失ってしまう。その後、娘のお腹は大きくなり三つの卵を産み、その卵から3人の男の子が産まれました。この3人が伝説となめる三兄弟でなのある。

reef sound -来間島歳時記- №008成長した三兄弟はある日来間島へと渡ると、島には人っ子ひとり見かけることがなく不審に思っていると、大きな鍋におびえながら身を隠していた老婆を見つけました。老婆によると夜な夜な赤牛が現れ、毎晩ひとりずつ島の人をさらっていくと云う。昨晩は娘がさらわれ、島にはもう自分しか残っていないから、今夜は自分がさらわれる番だという。

そこで3人は力を合わせて老婆を守って赤牛に立ち向かい、娘や島の人たちを返してもらうようにお願いすると、島の人がいつしか豊年祭を怠るようになったから赤牛は憤怒していると聞かされた。そこで三兄弟は豊年祭(ヤーマス・プナカ)を復活させ、毎年盛大に行うことを赤牛と約束しました。三兄弟の長男は助けた老婆の娘と結婚してふたりの娘をもうけ、娘たちは次男と三男とそれぞれ結婚し、この三兄弟を元にして島は子々孫々と栄えていったという内容でした。

オバァの話は難解で判りにくいところもあったものの、何とも不可思議でそれでいて妙にリアルさを感じる話でした。うむむっ、私の旦那の先祖は卵から産まれたのか・・・。
伝説・昔話とは云うものの、三兄弟がいたのではないかと感じさせるものが島にいくつかある。たとえば雨乞い座(小中学校の裏手)にある、三兄弟が植えたといわれている大きなデイゴの木や、三兄弟が耕していた畑は今もなお大切にされている。これらは本当に三兄弟が存在していた証なのか真実は定かではないが、21世紀の現代になっても連綿と息衝いているあたりは、きっと軽視できない島の真実の物語なのであろう。

reef sound -来間島歳時記- №008徳さんが小さい頃、話し上手だったオバァからさまざまな昔話を聞いたそうだ。今のようにテレビもなく夜になると六人の兄弟たちは、自然にオバァの元に集まって、ランプの薄明かりの下で昔話をせがんで聞き入っていたのだという。
オバァを中心に集う幼い子どもたち・・・想像しただけで私はめまいを覚え、羨ましくて羨ましくて仕方がなかった。昔話はこんな風にオバァから子どもへと口承で伝えられ、息衝いているのだ。
きっと来間には人の数だけこの昔話があるのだと思う。それぞれの語り口、それぞれの味付けで受け継がれてきているたのだろう。
三兄弟の島建ての伝説は、徳さんの身にしみ込んでいるのだろう。だからこの話が来間の要であり根幹であり、ヤーマス・プナカの大切さを、私がこれから島で生きていくにあたって伝えたかったのだろう。
reef sound -来間島歳時記- №008
赤牛との約束通りに来間島では、老いも若きも島人総出で盛大にヤーマス・プナカを二日間に渡って祝います。お祭りの一日目は早朝からそれぞれのモーヤーに島人たちは集い、サラピャースと云う各モーヤーに代々伝えられてきたアーグ(綾語/うた)を皆で声を合わせて歌い、神酒(ミキ)を順に回し呑みして子孫繁栄を祈願する。
「サラピャース」はヤーマスウガンにだけ歌われる神歌で、サツゥヌシューと云う歌い手に続いて、座に座る者が全員で手拍子しながらアカペラで復唱します。一番ずつ歌い終わるたびに、ふたりずつツヌジャラ(左右に角のような持ち手がついている木の器)に注がれた神酒を飲む。三ヶ所のモーヤー(本家)で歌われる「サラピャース」は、それぞれに微妙に歌詞や節回しが異なるのですが同日の同時間に一斉に歌われます。私の勝手な想像だけど、そうするこで三つの歌声がひとつのになって、祈りになるんじゃないかと思うのです。
reef sound -来間島歳時記- №008
「サラピャース」が終わると「マスピャー」と呼ばれる新たに成人した若者たちが一族の大人として仲間入りしたことを祝います。また、前年のヤーマス・プナカの後に産まれた子どもたちの誕生を祝い、一族に加わったこと祝う「マスムィ」が行われます。
ヤーマス・プナカの二日目も、初日同様にサラピャースを歌って神酒を廻し呑みとて豊穣を祈願します。午後は島内をパレードして廻ったあとは雨乞い座へと集い、いよいよ祭りは最高潮へと進みます。
神女による雨乞い座の座開きの踊りで始まり、男たちが各モーヤーに伝わる棒振りをそれぞれに奉納され、島の女性たちや来間小中学校の生徒たち、郷友会の人々による舞踊が次々と披露されます。もちろん祭りのフィナーレは全員で踊る躍動感あるクイチャーは、この島に産まれ生きている喜びと先祖への感謝の思いで、島の人たちの心がひとつになり、今年もヤーマスウガンを行えた喜びにあふれた、とても晴れやかな笑顔が咲いていました。この光景を見た瞬間、確かに神様はいる。ヤーマスの神様は私たちを見守ってくれていると強く感じるのだ。

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砂川葉子(すなかわようこ)
1975年生まれ 岐阜県出身。
2000年に宮古・来間島へ来島。縁あって農家の「嫁」となり、徳さん(ダンナ)、娘(4歳)、息子(2歳)の4人で力をあわせ、のんびり楽しく島に根付いた暮らしをしています。
徳さん(ダンナ)
生まれも育ちも来間島のダンナは、良くいえばマイペース。明日、地球が滅亡するっと世界中がパニックになっていても、ふらっとひとりで釣り(特にイカ釣りに熱中)に出かけてしまうような人。

「来間島・徳さんちのごうら畑」
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◆バックナンバーはコチラ
(文+写真:砂川葉子 編集:モリヤダイスケ)



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Posted by あんちーかんちー編集室 at 09:00│Comments(0)来間島歳時記
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