2011年02月11日
島の地ビール屋 まずがーと物語 #007

南の南の三角島。珊瑚の水を使って丹誠こめて造りあげた、宮古島で初めての産ビール「とぅりば」は、島の地ビール屋「宮古島マイクロブルワリー」のマイスターTのこだわりがいっぱいに詰まっています。今回のテーマは「泡」。それでは「まずがーと」始めましょうか・・・。
※ ※ ※
寒かったですねー、1月。ここはホントに南国・宮古島かい?って思うほど。だけど全国的に寒かったみたいで、私の故郷、新潟でも今年はずいぶんと雪が積もったようです。ところで、もっこりと屋根に積もった雪って、ビアグラスから溢れんばかりの泡を思い浮かべるのは私だけでしょうか?。ちょっと話の展開が上手すぎやしませんかって云われそうですが、今回はそんな泡の話を綴ってみたいと思います。

もう正確な年代は忘れてしまいましたが、確か、かれこれ15年ほどくらい前になりますか・・・当時の知り合いに連れられて訪れたのが、東京は日本橋にあったビアホール「灘コロンビア」というお店(現在は閉店)。ビール注ぎの名人と言われた新井徳司氏が開いたお店なんですが、私が行ったときは既に二代目の松尾光平氏に受け継がれていました。
ここで飲んだビールは「あれっ?」と思うほどいつものビールと違ったんです。何が違うって、何杯飲んでも苦みを感じないんですよ、4杯でも5杯でも。私は最高8杯も飲みましたが、最後まで苦くなく、すいっと喉を通っていきました。普段、ビールばかりを飲み続けていると苦味が口に残って、だんだんと美味しさを感じなくなるんですが、みなさんはそんな経験ありませんか?。

ここの美味いビールが飲みたくて通い始めたある日、店のカウンターで飲む機会があり、私は松尾氏に「ここのビールは、何杯飲んでも苦くないねぇ」と声をかけたんです。すると、松尾氏は「ビールってのはねぇ、グラスに注がれて初めて完成されるんですよ。注ぎ方ひとつで味は変わるんです」と云い、更に「うちのビールの泡はきめが細かいから、マッチ棒が立ちますよ」っと、小さなグラスにビールに注がれた泡にマッチ棒を刺し立て見せてくれました。
隣に一般的な注ぎ方をしたグラスも用意して、同じようにマッチ棒を立てるのですが、あっさりと倒れてしまうんです。そんな両者を飲み比べると、マッチ棒が立たない方はいつも飲んでる苦いビールそのもの。マッチ棒が立つ方は苦みがなくマイルドなこの店のビールなのです。
「ビールの苦みは泡に逃げるんです。うまく泡を立たせてやれば美味しいビールになるんですよ」と松尾氏。なんだかものすごい衝撃でした。
こんなことでこれほど味が変わるのか・・・っと。確かにこのお店でのビールの注ぎ方は違っていました。初めはビールサーバーから一気にグラスへビールを泡立たせて注ぎ、しばらくグラスを置いて泡が落ち着いたら余分な泡をヘラで削ぎ、また注ぎ直す。
この注ぎ方は瓶ビールでやっても同じように苦味が減って美味しくなるというので、次の日には早速、瓶ビールを買って来て、この注ぎ方を真似て「おおっ、味が変わった!」と自己満足の世界に浸るのでした。
思えばこの出会いから私のビール好きが始まったのだと思います。
そんな手間をかけるんだったら、初めっから苦くないビールをつくればいいじゃん・・・て、コトになりますよね。でもビールってヤツは奥が深いのです。この苦みと泡があってこそのビールであり、意外にも両者にはとっても深い関係があるんです。
そもそもビールの泡というは、醸造時に酵母が糖分を分解して、アルコールと炭酸ガスを作り出すんですが、この炭酸ガスがビール液に溶け込んでいて、グラスに注がれたときに泡となって出てくるのです。
この泡にはホップから溶け出した苦み成分が、ビール液の部分よりも多く含まれています。ホップの苦み成分は、泡をクリーミーにして泡持ちを良くする効果があります。ちなみにビールの泡の部分だけを飲んだことありませんか?苦味が強く感じるはずです。

じゃあこの苦い泡はいらないかって云うと、そうではないんですね。ビールは空気に触れるてしまうと、すぐに酸化が始ってしまうので、泡は蓋の役割を担っています。よくビールを飲んだ直後に鼻の下に泡を付けてる絵面がありますが、泡の下からビールを飲むというのは正解な形だったんですね。
だけど、泡の蓋は逆にビールの香りにも蓋をしてしまうことになります。ですから香りを楽しむビールでは泡が少ない状態か殆どで、泡が無い状態で注ぐようにして提供しているところもあります。
自分でもパブでグラスに注ぐときは、結構泡を意識してやってます。できるだけビールの味を損なわないように、そしてスタイルを崩さないように。そして何より泡が多くて中身が少ないと云われないように(笑)。
今月、発売を開始したコーラルダーク(黒ビール)。パブではそのままダークとして楽しむほかに、コーラルエールとのハーフ&ハーフもご提供させていただいてます。これがまた黒い泡と白い泡とのコントラストで美味しくて面白いです。是非味わってみてくださいね。
[関連資料]
松尾光平インタビュー ハピ研/アサヒビール
ビール党必見!!自宅で缶ビールをおいしいく飲む5ヶ条+α
※ ※ ※ ※
[筆者紹介]
マイスターT
将来、住みたいと思っていた宮古島へ、ひょんなことからハマってしまったビールを造るために、46歳の若さで仕事を辞めて、愛妻と愛犬とビールタンクと一緒にやって来てしまった、ちょっと無謀な男。
車・バイク・ボート・釣りが好きなのですが、島ではとりあえず車とバイクはおあずけ。ひとまずは島の地ビールが売れたら、マイ・ボートで思う存分に釣りへ出ることが、今の夢。
※バックナンバーはコチラ
[Miyakojima Micro Brewery]
所在地:沖縄県宮古島市平良久貝703-3 地図はこちら
TEL:0980-79-0059
Blog:宮古島マイクロブルワリーのマイクロな一歩
http://mmb.ti-da.net/
PUB業時間
4月~10月 15:00~20:00(LO.19:30)
11月~3月 15:00~19:00(LO.18:30)
定休日/火・水・木曜日
(文:マイスターT@Miyakojima Micro Brewery 編集+写真:モリヤダイスケ)
ここで飲んだビールは「あれっ?」と思うほどいつものビールと違ったんです。何が違うって、何杯飲んでも苦みを感じないんですよ、4杯でも5杯でも。私は最高8杯も飲みましたが、最後まで苦くなく、すいっと喉を通っていきました。普段、ビールばかりを飲み続けていると苦味が口に残って、だんだんと美味しさを感じなくなるんですが、みなさんはそんな経験ありませんか?。

ここの美味いビールが飲みたくて通い始めたある日、店のカウンターで飲む機会があり、私は松尾氏に「ここのビールは、何杯飲んでも苦くないねぇ」と声をかけたんです。すると、松尾氏は「ビールってのはねぇ、グラスに注がれて初めて完成されるんですよ。注ぎ方ひとつで味は変わるんです」と云い、更に「うちのビールの泡はきめが細かいから、マッチ棒が立ちますよ」っと、小さなグラスにビールに注がれた泡にマッチ棒を刺し立て見せてくれました。
隣に一般的な注ぎ方をしたグラスも用意して、同じようにマッチ棒を立てるのですが、あっさりと倒れてしまうんです。そんな両者を飲み比べると、マッチ棒が立たない方はいつも飲んでる苦いビールそのもの。マッチ棒が立つ方は苦みがなくマイルドなこの店のビールなのです。

こんなことでこれほど味が変わるのか・・・っと。確かにこのお店でのビールの注ぎ方は違っていました。初めはビールサーバーから一気にグラスへビールを泡立たせて注ぎ、しばらくグラスを置いて泡が落ち着いたら余分な泡をヘラで削ぎ、また注ぎ直す。
この注ぎ方は瓶ビールでやっても同じように苦味が減って美味しくなるというので、次の日には早速、瓶ビールを買って来て、この注ぎ方を真似て「おおっ、味が変わった!」と自己満足の世界に浸るのでした。
思えばこの出会いから私のビール好きが始まったのだと思います。
そんな手間をかけるんだったら、初めっから苦くないビールをつくればいいじゃん・・・て、コトになりますよね。でもビールってヤツは奥が深いのです。この苦みと泡があってこそのビールであり、意外にも両者にはとっても深い関係があるんです。
そもそもビールの泡というは、醸造時に酵母が糖分を分解して、アルコールと炭酸ガスを作り出すんですが、この炭酸ガスがビール液に溶け込んでいて、グラスに注がれたときに泡となって出てくるのです。
この泡にはホップから溶け出した苦み成分が、ビール液の部分よりも多く含まれています。ホップの苦み成分は、泡をクリーミーにして泡持ちを良くする効果があります。ちなみにビールの泡の部分だけを飲んだことありませんか?苦味が強く感じるはずです。

じゃあこの苦い泡はいらないかって云うと、そうではないんですね。ビールは空気に触れるてしまうと、すぐに酸化が始ってしまうので、泡は蓋の役割を担っています。よくビールを飲んだ直後に鼻の下に泡を付けてる絵面がありますが、泡の下からビールを飲むというのは正解な形だったんですね。
だけど、泡の蓋は逆にビールの香りにも蓋をしてしまうことになります。ですから香りを楽しむビールでは泡が少ない状態か殆どで、泡が無い状態で注ぐようにして提供しているところもあります。
自分でもパブでグラスに注ぐときは、結構泡を意識してやってます。できるだけビールの味を損なわないように、そしてスタイルを崩さないように。そして何より泡が多くて中身が少ないと云われないように(笑)。
今月、発売を開始したコーラルダーク(黒ビール)。パブではそのままダークとして楽しむほかに、コーラルエールとのハーフ&ハーフもご提供させていただいてます。これがまた黒い泡と白い泡とのコントラストで美味しくて面白いです。是非味わってみてくださいね。
[関連資料]
松尾光平インタビュー ハピ研/アサヒビール
ビール党必見!!自宅で缶ビールをおいしいく飲む5ヶ条+α
※ ※ ※ ※
[筆者紹介]
マイスターT
将来、住みたいと思っていた宮古島へ、ひょんなことからハマってしまったビールを造るために、46歳の若さで仕事を辞めて、愛妻と愛犬とビールタンクと一緒にやって来てしまった、ちょっと無謀な男。
車・バイク・ボート・釣りが好きなのですが、島ではとりあえず車とバイクはおあずけ。ひとまずは島の地ビールが売れたら、マイ・ボートで思う存分に釣りへ出ることが、今の夢。
※バックナンバーはコチラ
[Miyakojima Micro Brewery]
所在地:沖縄県宮古島市平良久貝703-3 地図はこちら
TEL:0980-79-0059
Blog:宮古島マイクロブルワリーのマイクロな一歩
http://mmb.ti-da.net/
PUB業時間
4月~10月 15:00~20:00(LO.19:30)
11月~3月 15:00~19:00(LO.18:30)
定休日/火・水・木曜日
(文:マイスターT@Miyakojima Micro Brewery 編集+写真:モリヤダイスケ)
Posted by あんちーかんちー編集室 at 09:00│Comments(2)
│まずがーと物語
この記事へのコメント
いつもステキなお話しをありがとうございます。
ビールを美味しく感じ始めた頃を、懐かしく思い出しました!
ぜひお店の方で宮古地ビールを飲んでみたいです。
ビールを美味しく感じ始めた頃を、懐かしく思い出しました!
ぜひお店の方で宮古地ビールを飲んでみたいです。
Posted by スーチャン at 2011年02月14日 14:30
スーチャンさん
コメントありがとうございます。
そんな風に読んでもらえたなんて感激です。
次は何を書こうかなって意欲が湧き上がって来ましたよ。
是非パブの方にも遊びに来てくださいね。
コメントありがとうございます。
そんな風に読んでもらえたなんて感激です。
次は何を書こうかなって意欲が湧き上がって来ましたよ。
是非パブの方にも遊びに来てくださいね。
Posted by マイスターT at 2011年02月14日 22:54