日本最南端の国道を行く-Route 390- 後編

あんちーかんちー編集室

2009年11月10日 09:00


「Google Street View」の宮古島エリア拡大を聞きつけて始めた思いつき実験企画、「日本最南端の国道390号を行く~あんちー版Street View」の後編です。前編では起点の城辺地区保良からスタートして、旧・上野村までを走破してみました。後編は旧・下地町と旧・平良市を走ります。さてはて、どうなりますやら・・・。

上野の交差点を通過してしばらくすると、下地と上野の町村界の標識が現れました。合併にともなって最後の「町」の字が消されています。元々、上野は下地の一部でしたが1948年8月1日に上野村として分村し、2005年10月1日の宮古島市の誕生により、五市町村とともに再びひとつとなりました。
下地町内の国道390号は、以前から整備が進んでおり、道幅も歩道もしっかりとしています。車窓を流れる風景もすでにお馴染みとなったサトウキビの畑が広がっていますが、城辺や上野あたりに比べて起伏は緩やかになり、片登りの急登する丘脈もありません。
いくつか小さな集落を抜けると、来間島への案内板が現れました。ここを曲がれば日本最長の農道橋・来間大橋(1690メートル)を渡って来間島に行くことが出来ます(来間大橋を渡るStreet View)
続いて現れた案内看板は、前浜港(漁港)へ向かう信号のある交差点。前浜といっても漁港の方なので、東洋一とうたわれている前浜ビーチの外れになりますが、漁港脇に岸壁があるので前浜ビーチに車で最も近づける場所だったりします。
信号を越えた先には何でもそろう便利なAコープがあります。お弁当などもあるので、ビーチでピクニック気分を楽しむのもおすすめです(前浜漁港の岸壁からのStreet View)。


大きな地図で見る(次のコマに進むと、道がとんでもないことになっています!)

Aコープの先、路傍に390号のオニギリマークの入った青いポールが立っていました。起点の保良から19キロ。次の集落、川満まで1.1キロと書かれた距離標です。この距離標はこの付近から道路脇のポイントごとに立っているのですが、ポールに宮古口でさまざまなワンフーズが記されています。このポールには城辺の友利にあった「すなかぎくがに」と書かれていました。

下地地区・上地の交差点にさしかかりました。この信号を左に曲がれば前浜ビーチに面した宮古島東急リゾートがあります。国道はこの交差点を右折になります。
交差点を左に曲がると、与那覇湾が見えてきました。街路樹がちょっと邪魔で眺望は開けませんが、国道390号では数少ない海沿いの区間です(左にひとコマ戻ると、へんなものが映っています)。


大きな地図で見る通行止め前の雰囲気

もうひと息で沖縄製糖というところで、国道が通行止めになっていました。理由は国道に架かる咲田橋の架け替え工事です。そもそも山がないので川もないと思われている宮古島ですが、実は小さな川は島のあちこちに流れています。咲田橋の架かる咲田川もそのひとつで、島の民話にはこの川を題材にした「川の種をわける話」や、咲田川の水を汲むと酒になっていたという養老伝説(この場合は酒田川と書かれることがある)などがあります。
また、国内最古の石矼(いしばし)として県の史跡にも指定されている「池田矼」が架かっています。この付近は古くから平良(漲水港)と下地(与那覇など)を結ぶ街道で、与那覇湾の干満にさらされる波打ち際を通っている難所として、繰り返し改良工事が施されていた場所なのだそうです。


大きな地図で見る架け替え前の咲田橋

さて、車両は通行止めとなっているので、不通区間を徒歩でちょっと覗いてみました。
海岸沿いにある赤い鳥居の赤名宮を尻目に、巨大なクレーン車の下を通って、建設中の咲田橋に架かる徒歩用の仮橋を渡って対岸へ渡ってみました。工事は来年1月の完成とのことで咲田川に架かる新しい橋もかなり出来あがっていました。
車に戻って国道の迂回路を進んでみます。迂回路は農道なので途中に臨時の信号が設置されていました。使われている信号は工事用のものですが、太陽光発電の信号機がつかわれていました。
サトウキビ畑の中の迂回路を抜けて、国道390号に復帰しました。平良側の通行止めの地点からも橋の工事区間を眺めて見ると、製糖工場の煙突とクレーンがそびえる空の下を、下校中の子供たちが車の来ない車道の真ん中をのんびりと歩いていました。

国道の旅を再開しましょう。与那覇湾沿いを走っていた国道も少しばかり内陸へ入り、下地地区最後の集落となる川満集落にやってきました。
点滅式のひとつ目信号がある川満交差点の脇には、宮古島では珍しいマングローブ林があります。その奥は「美ぎ島ミュージックコンベンション」(2009年の模様⇒前編後編)が催される川満漁港があり(車では交差点を左折)、のどかな漁港の岸壁で釣りを楽しむ姿も見られます。
川満を抜けてしばらく進むと宮古空港への分岐となる空港南交差点に到着しました。右の県道243号線へと進めば空港です。

国道390号は空港南交差点から、県道243号との重用区間となります。県道243号は東海岸の高野から、宮古島を東西に横断して、宮古空港の南側を抜けて島の西部を通る国道へと合流しています。
その交差点のすぐ先で、ついに国道は平良へと入ります。ちょうどこの市町界は空港南交差点をショートカットして国道から県道243号へ抜ける裏道になっており、細い農道でありながら上り下りとも交通量が多いので、飛び出してくる車には注意しましょう。
宮古空港の西端を通過すると次第に平良の街並みが近づいてきます。自称・日本最南端のファミマがある松原の交差点に到着しました。ここで空港南から重用区間になっていた県道243号が分岐します(直進方向)。線形からすでに想像がつくと思いますが、左のバイパスが完成するまで県道243号は国道390号でした(1999年に国道から格下げ)。


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市内の混雑を避けるために建設されたバイパスなので、直線も多く交通量の割には走りやすい道です。このバイパスの開通によって人の流れが変わったこともあり、近年、盛んに発展開発が進むエリアとなっています。
その核となるのが、今月21日にマックスバリュ宮古南店(旧プリマート)が大規模なリニューアルをし、風力発電や太陽光発電、壁面緑化といった環境配慮型のエコストアというコンセプトのイオンタウン宮古南ショッピングセンターがオープンします(店舗面積で現行のおよそ9倍で、イオングループのエコストアとしては国内最大の苫小牧ショッピングセンターに次ぐ規模)。
小さな街道と交差する信号にやってきました。この交差点を右へ曲がって坂を下ると平良の市街地に出ます。この坂はこれまでも何度か紹介した丘脈の一部で、カママ嶺公園として整備されています(丘の上からは市内が一望できます)。この公園では毎年11月第1日曜日に、宮古の伝統芸能の祭典「クイチャーフェスティバル」が開催されています(今年は11/1に行われました)。
パイパス沿いのこの付近は、島APでも取り上げた大見俵三区という自治会区域(住所としては宮古島市久貝)で、新しいものと古いものが路地の中に溶け込んでいます。そんな大見俵三区を進んでゆくと、やがて県道192号と交差する交差点にたどり着きました。
この県道192号は全線の9割近くが県道252号と重用しています。県道番号だけでは意味が判りにくいので補足すると、県道192号は平良久松港線と呼ばれ、県道252号は伊良部大橋を渡って下地島まで続く平良下地島空港線なのです。つまり、左折すれば久松五勇士で名高い久松に続いているだけでなく、現在建設中の伊良部大橋(2013年旧正月頃完成予定。完成すれば再び県内最長の橋として、来間大橋が持っていた記録を塗り替えた、古宇利大橋からタイトルを奪還します。同時に日本最長の無料橋梁にもなります)。蛇足として、県道252号は最も新しい沖縄県の県道(最大番号)でもあります。
さらに余談ですが、この交差点の角にはファミリーマート宮古カママ嶺公園前店が移転して、ファミリーマート宮古久貝店(左角の畑)と名前を変えて大きくなったファミリーマートがあります。

信号を越えると下り坂にさしかかります。目の前が開けて海を越えたその向こうに伊良部島が見えてきました。こうして見えてると伊良部島も近く感じますが、伊良部大橋の全長(橋本体は3.5キロですが、取付道路を含むと)は約7キロほど。見た目よりも島を隔てる距離は遠いのだと気づかされます。
坂を下り切ると、変形の三叉路に行き当たります。本線の国道390号は大きく左にカーブしています。この三叉路を左に曲がると巨大な埋め立て地トゥリバー(遠景に建設中の伊良部大橋)へと続いています。トゥリバーは人工ビーチの他、マリーナや公園として整備が進んでいますが、メイン事業のリゾートホテル建設は未だに進んでいますせん。

いよいよラストスパートです。
カーブを曲がって国道は東に向きを変えます。市民の憩いの場所としても人気のあるパイナガマビーチ(南長間)にやって来ました。最近、パイナガマビーチ周辺は綺麗に再整備されたのでStreet Viewとはずいぶんと雰囲気が異なっています。また、あまり知られていませんが、島の梅雨明けにあわせるように毎年6月下旬頃には宮古WEEKとして無料のライブイベントが開催されています。
パイナガマを過ぎると、いよいよ平良の港湾地区に入り、都市型リゾートのアトールエメラルド、伊良部島への渡船が発着するマリンターミナル、宮古島で唯一の本格的なマティダ劇場など、港湾地帯のさまざまな施設が現れます。


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マティダ劇場を過ぎた先の交差点を右手に進めば、宮古随一の歓楽街イーザトがあり、左手に進むとかつては漲水港と呼ばれていた平良港へと続いています。Street Viewで港の奥まで進めてみると、マテイダ劇場を越えたところで、植え込みを飛び越えてマリンターミナルの岸壁に画像が飛び、はやて海運の双胴型高速フェリー「スーパーはやて」が停泊しているのが確認できます。
遂に国道390号の宮古島での旅もおしまいです。宮古島の終点となる平良港交差点に到着しました。
交差点の右手の坂を登ると宮古島市役所があります。この道は松原で分岐した旧・国道390号だった県道243号の終点でもあります。


大きな地図で見る終点・平良港

思いつきの実験企画も終着を迎え、起点で国道らしいものを見出したので、ここにもないかと探したところ、街路灯の銘板に見つけました。国道390のポール番号No1です。交差点の脇にこれといって特別ではない街灯なので、ちょっとした自己満足出しかありませんが。。。
これにて日本最南端の国道の宮古島での旅は完結です。お楽しみいただけましたでしょうか?。宮古での旅は終わっても、国道390号はもう少しだけ続いています。この平良港から先は海上区間を経て、本島は那覇埠頭の通堂町(とんどう)に続いています。国道390号が本島に上陸した後は、わずかで600メートルしかありません。
地図の上では人が定めしたったひと筋の線に過ぎませんが、この日本最南端の国道390号は、本島と宮古と石垣を、結びつなぐ大切な道です。

前編 http://akmiyako.ti-da.net/e2612413.html
(文+写真+編集:モリヤダイスケ)
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