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2011年02月18日

島の本棚~ほんのむしぼし~Vol.003

島の本棚~ほんのむしぼし~Vol.003
咲き誇る寒緋桜の枝にも新緑が芽吹いてきた、ここ宮古島。
そろそろ万物が活動を始める季節です。生きとし生けるもの、だけでなく、普段はひっそりどこかに佇んでいる魂(タマス)たちも、活気づく頃(のはず)。今日は旧十六日祭でもありますから、あながち時季はずれではないとも思えるので、今回は「春のうららの怪談本」特集。勝手にブックセレクター“jurim"が、新旧とりまぜて郷土の怖~い本をご紹介します。この春、オトナの怪談・・・じゃなくて“大人の階段のぼる"、あなたにもオススメです!

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カラー版 沖縄の怪談
島の本棚~ほんのむしぼし~Vol.003
1960年代後半~70年代生まれの方なら、きっとどこかで、このラベンダー色の表紙を目にしたことがあるのではないでしょうか。
「真嘉比道の逆立ち幽霊」「伊江島ハンドー小」「喜屋武岬のはなもー(鼻無しの亡霊)」などなど、沖縄の(一部、奄美のお話も)古典怪談がぎっしりと詰まった濃い内容です。また、物語によっては日本国内での類話などにも言及していますし、巻末の参考文献の多さも圧巻で、丁寧に編集されたことが分かります。

宮古関連では「カママミネの遺念火」として、哀しい運命をたどった夫婦の物語も収められています。今でこそカママ嶺は公園として広々と整備されましたが、私たちが子供の頃には一部はまだうっそうと木が生い茂り、どこかにオバケでもいるのではないかと、夕暮れには足早にそばを通り抜けたものでした。
この本で出色なのは、その豊富なカラー絵図。表紙をめくると、妖怪・幽霊マップまで付いている念の入れようです。あまりの迫力に、トラウマになった子供たちは数知れず・・・。個人的には「水死した五人の女の亡霊」のイラストが最“恐”でした。また、出版された70年代当時にはまだ残っていた沖縄独特の風習などが写真付きで載っていたりして、うちなーんちゅの死生観を知るためにも、実はすごくお勧めしたい一冊なのです。古い本ですが、宮古島市立図書館などで閲覧することができます。
ぜひ一度、この奥深い世界にどっぷりはまってみてください!

ぴるます話/続ぴるます話
島の本棚~ほんのむしぼし~Vol.003
「ぴるます」とは、宮古の言葉で「びっくりする」といった意味。宮古民話の会を立ち上げて宮古諸島の昔話を長年聞き取り研究し、『みやこのみんわ』などに結実した著者ならではの、数多くの不思議な話・こわい話がたくさん収録されています。
この本の素晴らしさは、編者がきれいに話をまとめるだけではなく、話によっては、話者のナラティブ(語り口)を尊重して表記しているところ。例えば、「もう私は○○だから、△△して、ブルブルふるえて、おったわけさ私はそこに」みたいな感じで、その洗練されていない語り方が、逆にとってもリアルに読み手に伝わってきます。一見、普通の生活を営んできたように見える宮古の人々が体験した、唯一無二の驚きの物語を、自分も膝を交えて聞いているような感覚になるのです。
宮古島のカンカカリャ(ユタ、シャーマン)の世界について関心のある方はもちろん、宮古にこれから住んでみようと考えている方には、シマでの禁忌などを理解するためにも、ご一読をお勧めします。ちなみにこの2冊、いずれも1990年代のいわゆる「バブルの崩壊」の後に出版されています。人々の関心が物質的なものから精神的なものへと移ってゆく中、この本に何かの安らぎや自分の根のようなものを求めた人たちも多いのかもしれません。

現代実話集 琉球怪談 闇と癒しの百物語
島の本棚~ほんのむしぼし~Vol.003
江戸の昔、奉行をしていた根岸鎮衛という男が、巷でキャッチした噂話を「耳袋」というショートショート集にして出版していたそうです。いまでいう都市伝説みたいなもので、この手の話は現代でも人気の根強いジャンルですね。
今年1月に刊行されたばかりの「琉球怪談」は、著者が県内各地を実際に訪ね歩いて収集した、現代沖縄の“百物語”です。戦慄の恐怖体験から、優しいご先祖様の話まで、バラエティ豊かなエピソードが収められています。しかも、ひとつとして“どこかで聞いたような”類型的な話がない。これも著者のフィールドワークのたまものでしょう。
中には、以前とある宮古関連本で少し触れられていた、ちょっとユーモラスで、科学では解明のつかない体験談も。家に現れた変なおじさんの目撃談を話していた中学生の女の子が、なんとその間だけ身長が伸びてしまうというお話など。実は著者は以前に宮古島に住んでいた時期があるそうで、本書には他にも、明記されていないけれど宮古でのお話が記されているそうです。そのお話も推察するのも、宮古ゆかりの方には楽しそう。
霊魂に暮らしをおびやかされる話もありますが、ああやっぱり、私たちを見守る何かが確実に存在するんだろうなあ、と、なんとなくホッとする内容でもあります。私は沖縄のテレビ局でときどき放映される「オキナワノコワイハナシ」というホラー短編ドラマシリーズが大好きなのですが、この本のエピソードもいつか映像化してほしいものです。

※      ※      ※

[書籍データ]
「カラー 沖縄の怪談」
月刊沖縄社
発刊日 1973年8月1日

「ぴるます話」
佐渡山 安公/かたりべ出版
発刊日 1993年2月27日

「続・ぴるます話」
佐渡山 安公/かたりべ出版
発刊日 1996年11月10日

「現代実話集 琉球怪談 闇と癒しの百物語」
小原猛/ボーダーインク
発刊日 2011年1月31日
ISBN 978-4-89982-196-0

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[島の本棚] バックナンバーはコチラ
Season1 「島の本棚~宮古島を読む」
 myklibvo1/2009年3月~7月隔月掲載 全三回
Season2 「島の本棚~Read Or Dreams」
 沖縄教販宮古店/2009年9月~2010年1月隔月掲載 全三回
Season3 「島の本棚~NIGHT OF GOLD」
 密牙古文化部/2010年4月~2010年10月不定期掲載 全四回
Season4 「島の本棚~ほんのむしぼし」
 ブックセレクター・jurim(ゆりむ)/2010年11月~ 連載中 
(文+写真:jurim 写真+編集:モリヤダイスケ)





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Posted by あんちーかんちー編集室 at 09:00│Comments(1)島の本棚
この記事へのコメント
わかる、わかる。ウンウン
家にもあった!
小学生のときは見るのが怖いから
夏休みの真っ昼間、静かに見てた。

で、犬が わわわん、わん、わん、わん。と
吠えてビク〜〜〜〜〜っ!!!としたよ。
吠えた犬は悪くないけど頭に来て
「ばーか!」と怒ったさ(笑)
Posted by いっち~いっち~ at 2011年04月25日 16:57
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