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2009年06月23日

多良間島のスツウプナカ

多良間島のスツウプナカ
宮古島と石垣島のちょうど真ん中あたりにある、まあるくて平たい多良間島。島の特産で美味しいと評判のタラマピンダ(山羊)や、素朴な味わいの揚げお菓子「ぱなぱんぴん」、そして世界遺産の候補としても注目されている、華やかな衣装が印象的な豊年祭「八月踊り」で知られている島。
その「八月踊り」と並んで多良間島の二大祭祀として、島人が総出で催される節祭「スツウプナカ」を見てきました。

多良間島のスツウプナカスツウプナカは旧暦五月頃の壬辰と癸巳の二日間に行われるとされていますが、なかなかに奥の深い祭りのようで、その準備は旧正月後の予算会から始まり、本番の日が近づくに従って祭祀で使うミス(神酒)を作ったり、供物の材料となる魚を捕りにいったりと、何日も前からさまざまな準備に追われるそうです。ひとことでスツウプナカといっても、祭祀には島のほとんど人が役割を持ち伝統行事が形作られているため、その全容を把握することはとても難しいのですが、島の人々が力を結集させ心をひとつにして執り行なわれている、スツウプナカはとても素敵なお祭りでした。

スツウプナカの本番当日、宮古島の平良港から「フェリーたらまゆう」に揺られ、およそ2時間かけて多良間島へと上陸しました。
1999年に多良間島を経由して、水納島へと渡ったのが初訪島。その後、八月踊りを見に行ったりもしたので、少なくとも7~8年ぶりの多良間島です。当時はまだ旧空港で、飛行機も今よりも小さいく、フェリーも当然、旧型でした。
普天間港から宿の送迎に拾われ、集落へと向かう牧場とサトウキビ畑が広がる風景に、そういえば港から続くこの道は拡幅工事中だったと記憶が蘇ってきました。

多良間島のスツウプナカ宿でひと息入れたあと、スツウプナカの会場のひとつ、集落の西端にあるナガシガーへ。スツウプナカは多良間村にある仲筋と塩川のふた字を、8つの区に分け4か所の祭場で行われます。

 ・ナガシガー(長瀬川宗根) 仲筋の土原区と宮良区
 ・フダヤー(札屋宗根) 仲筋の天川区と津川区
 ・パイジュニ(南宗根) 塩川の大木区と吉川区
 ・アレーキ(新池宗根) 塩川の嶺間区と大道区
 (多良間村字水納も、水納島の水納御嶽で行われます)

福木並木の脇に張られたテントの下、ツカサを初めとした来賓を招いてなごやかに始まりました。両側に取っ手のついた器「ツヌジャラ」にミス(神酒)を注ぎ、ふたりずつに振る舞い、「ウヤキ ツヌジャラヲ ピャシバドゥ ユヤナウリ°」っと独特のリズムで歌いだすと、座の参加者が一斉に立ち上がって拍子を取りながら囃し歌います。
多良間島のスツウプナカ  ウヤキ ツヌジャラヲ ピャシバドゥ ユヤナウリ°
  ウヤキ ツヌジャラヲ ピャシバドゥ ユヤナウリ°
  クガニ ツヌジャラヲ ピャシバドゥ ユヤナウリ°
  ウヤキ ユナオーレガ ユイトーレガ
  ウヤキ ユナオーレガ ユイトーレガ
  ユナオーレガ
  ユナオーレガ
  ユナオーレガ
  ユイトーレガ
  ヒーヤヤッカヤッカヤッカヤッカヤッカヤッカヤッカヤッカ

最後に「ヒーヤヤッカヤッカ・・・」と楽しげに歌って盛り上がります。これをなんども繰り返して豊穣を祈ります。ひとつの器で酒を皆で廻し呑む方式は、どこか「オトーリ」のようにも見え、心ひとつに声をそろえ、祈り踊るさまは「クイチャー」の原点のようにも感じました。
多良間島のスツウプナカ時折、スコールが降り注ぐ不安定な天候に少々に気を揉みつつも、スツウプナカ本番の今日は、西から順にツカサたち一行が祭場を訪れて廻るので、次のフダヤーへと先回りをしてみました。フダヤーはサトウキビ畑の一角にテントが張られ、迎えの準備に余念がありません。
やがて、ツカサたちが現われ席に着くと、ミス(神酒)や供物を並べて神妙に祈りを奉げ、フダヤーでのもてなしが始まりました。
多良間島のスツウプナカ16時過ぎ、そろそろ三つ目の祭場パイジュニが始まろうかという矢先、突然の大雨が降り出しました。パケツどころか風呂桶をひっくり返したくらいの豪雨に、軒下から一歩踏み出すことが出来ないほど。一時間以上も降り続いた強く激しい雨もようやくおさまり、やれやれと思いきやパイジュニへやって来たツカサら一行に挨拶をする世話役は、「これぞ豊穣をもたらす約束の雨」と感謝の世辞を述べていました。
多良間島のスツウプナカ雨もすっかり上がり、西の空に薄っすらと茜色に染まる雲が出ていました。どこか神秘的な雰囲気に、トワイライトゾーンへ迷い込んだような気分になりました。
19時頃、雨の影響もあって少し遅れて最後のアレーキへ。ここは他の三ヶ所とは少し異なり、大木公民館の中で行われます。
アレーキの祭事の途中、祭りの準備で忙しい頃からお世話になった、パイジュニの海人座(イム°ピィトゥジャー)の方から、北海人(海人座の役割での呼び名)が集まっているから来ないかとお誘いを頂き、いそいそとあつかましくも海人座(といっても、一般のお宅)へ。
多良間島のスツウプナカ海人座はスツウプナカで使われる料理の材料にする魚を捕って来る役目で、祭祀の三日前から漁をしています(とはいえ、近年は冷蔵設備も整ったので、天候不良を考慮して早目から準備しておくそうです)。総勢19名の北海人の皆さんは、スツウプナカの本番も済んで打ち上げをされているのかと思いきや、パイジュニからの使者を待っているとのこと。しばらくすると、なごやかに北海人の皆さんが集う海人座に、パイジュニからの使者が現われました。
道の真ん中にテントが張られ、祭場になっているパイジュニへ移動すると、朗々とニィリ(祈り:神歌)を歌っていました。この歌はなんでも130番まであるというから驚かされます。
多良間島のスツウプナカ日々、スツウプナカのために漁へ出ていた海人座の労をねぎらう、酒や料理が振る舞われます。やがて「ヤッカヤッカ」の囃しにあわせてミス(神酒)を呑み交わす、スツウプナカの“夜の部”が始まりました。昼の祭事よりも明からその勢いは激しく、みんなノリノリで歌い飲み楽しんでいました。
すでにかなり遅い時間にもかかわらず、気づくと子供たちが北海人がヤッカヤッカとやっている様子を見に来ていました。祭りの準備で家に戻れないお父さんに逢いに来たのだそうですが、なんとなくその光景はスツウプナカの継承をしているようにも思えました。
多良間島のスツウプナカ一緒になってそれを眺めていたら供番座(クバンザ)の方に声をかけられ、汁物(シームヌ)や供物などを色々とご馳走になってしまいました。供番座は海人座が捕ってきた魚を調理して、大量の供物を調理して提供する役割を担っています。海人座の慰労が終わったあと、夜中になるけど各座で打ち上げをするから、供番座に遊びにおいでと誘われるも、睡眠不足による眠気とすすめられるままに呑んだアルコールで、残念ながら活動限界に達しようとしていたので、名残惜しくもあえなく撤収(供番座の皆さん、ごめんなさい)。しかししかし、多良間の人々の楽しみであるスツウプナカはまだまだ続くのでした。
多良間島のスツウプナカのどかでぬくもりにあふれた多良間島に脈々と根付く、コミュニティーが総力をあげて一年間の五穀豊穣を願う祭り「スツウプナカ」は、とても熱く、思いにあふれ、島がひとつになる力が宿っている、そんな素敵な島の民俗行事でした。
素人考えではありますが、逆説的に思うに、どれだけ人頭税が過酷であったかを物語っているように感じました。この「スツウプナカ」と秋に行われる「八月踊り」は、多良間島の二大祭祀として名高く、「スツウプナカ」は豊作に恵まれることを祈り、「八月踊り」は豊作に感謝し人頭税の完納を祝う祭りとして対をなしており、いずれも島をあげて一丸となって盛大に催されます。それは確実に貢物を納め、多良間島という環境で生きてゆくための姿が、民俗文化として投影されているのではないかと感じました。
人は何もない島と多良間島を評しますが、物や形ではない無形の資産がそこにはたくさんありました。ぜひ、多良間島を訪れたならば、目ではなく心で見て多良間島を楽しんでください。こんな面白い島はそうはありませんから!。

(文+写真+編集:モリヤダイスケ)





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Posted by あんちーかんちー編集室 at 09:00│Comments(5)あんちーな特集
この記事へのコメント
こんにちは(^^)
この「八月踊り」が東京の国立劇場から招待を受けて公演された時に行きましたよ。

で、帰りに宮古出身の経営する店に行き話で盛り上がっていると・・・
常連さんの一人が
「秘め事の神様の祭りを売り物にしやがって・・・!」と怒っていらっしゃいました。

私はその方と主催者(内地の人・沖縄大好きの人)の間に挟まれて大変でした。
でも、確かに”門外不出の祭り”を持ち出したことになることに初めて気が付きました。

常連さんは宮古島を離れて内地で懸命に働いていらっしゃる方でもあり、
自分のふるさとが汚されたと感じてもおかしくはないですものね。

私はこの常連さんの気持ちも理解できます。でも、主催者の方の”こんなに素晴らしい沖縄を皆に見せたい!”というお気持ちも理解できます。
この体験はイロイロ考えさえられましたよ。

私は仕事で全国アチコチ行きますが、その土地土地の大切なものを壊していないか?汚していないか?・・・と自分自身に問いかけながら動くことを心がけています。(この出来事がキッカケです。)

常連さんと主催者、どちらが正しいのかは、今もって私もわかりません!
ただ、何かを動かす時というのは本当に”大変な”ことだと実感しています。
そして、おこがましいなぁ~と思う瞬間も沢山あります。

なんだか、まとまりの無い文でごめんなさい。
Posted by スーさん at 2009年06月26日 14:34
人頭税は過酷だったとどの文献にも載ってますね。
特に宮古島が・・・。
哀しい史実です。
今も変わらない?
Posted by スーさん at 2009年06月26日 14:36
私が住む街は主人の実家の隣町です。中古の物件が売りに出されていたので購入し住みましたが・・・。

有無を言わさずに、その街の神社の氏子にされます。ツカサにあたる宮司さんの挨拶もないです。

お布施?も毎月徴収されます。伊勢神宮からも徴収が来ます。(東京暮らしでは無かったな。)
暮らして2年になりますが・・・。未だにとまどいが・・・?

面白かったのは厄年(40代)の方がフンドシ一丁で町内を皆で全力で走ることです。フンドシというのは沖縄ではあるのかな?

カマトトぶるわけではないですが、目のやり場に困ります(照れ)
しかも、全力で走って厄を落とすって・・・?

落ちた厄は誰が片付けるの?と嫌味が出てしまうのは私だけでしょうか?
もしも家の前に落とされてしまったらどうなるのでしょうか?
と、突っ込みを入れたくなるバチあたりな私です。

郷に入っては郷に従え・・・とありますが・・・?
たまたま、中古物件を買っただけなんだってばぁ~。
不動産屋さんのチラシにはコミニュティのことまでは書いてないしなぁ~。

暮らして2年。飲み会一回も無いが神社の草取りには200名も集まる
凄い協力的な人々?です。
ちなみに神社の大きさは明治神宮の1000分の1くらいです(小さっ!)

あっ!我が家の門扉のシーサーには誰も話を触れませんよ(^-^)
まっ、いいけどさ・・・ぁあ・・・。
Posted by スーさん at 2009年06月26日 14:55
スーさん様>
いっぱいコメントありがとうございます。
ふんどしで走り、厄払い。
個人的な見解ですが、これはどことなく、
「奇異な格好で、追い掛け回し、厄を払う」
島尻のパーントゥにも類似している気がします。

「島尻のパーントゥ」
http://akmiyako.ti-da.net/e2268946.html
Posted by あんちーかんちー at 2009年06月27日 10:31
パーントゥ・・・あっ!本当ですね?
似ています。

今。気が付きました。
Posted by スーさん at 2009年06月29日 06:40
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