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2009年12月22日

かりとばせ!サトウキビ!

かりとばせ!サトウキビ!
「ハーベスタ」といっても、タオルを振り回してゴキゲンに歌い踊るキキやテツのことではありません。あのサトウキビ畑で働くゴツイ奴のことです。先ごろ製糖工場にも火が入り、これから島ではブーズナギ(キビ刈り)の季節がやって来ます。そんなキビ刈りで大活躍する「ハーベスタ」を間近で見てきました!

かりとばせ!サトウキビ!
※上の画像はクリックすると大きく表示されます。

攻撃的で強そうな部品が丸出しになっていて、今にも音を立てて変形してロボットになりそうなシルエットは、建設機械や巨大マシーンが好きな男児でなくとも、思わずワクワクしてしまう雰囲気です。
大きく堅牢な格納庫のシャッターが開き、エンジン音を轟かせハーベスタが姿を現しました。秘密基地から出撃して来た特撮ヒーローものを彷彿さる、この緑色の大きなボディーのハーベスタが「UT-120K」です。正式にはケーンハーベスタと呼び、このサイズでも小型に分類される大きさ。
UT-120Kのスペックは、全長およそ6メートル、全幅は約1.8メートル、全高が約4メートル、重量は7.9トン。エンジンの出力は107馬力(UT-120Kカタログ)。
かりとばせ!サトウキビ!このUT-120Kを製造しているメーカーは、「魚谷鉄工」という奈良の企業。その名の通り鉄工所として創業後、移動式クレーンの製造許可を受けてクレーン車などを製造。また自動車整備技術と油圧技術を活かして、林業用作業車輌やさとうきび収穫機などの製造に取り組み、「ウオタニ」のブランド名は沖縄・奄美のサトウキビ業界では圧倒的なシェアを誇っているそうである。
ちなみにこの「緑」のウオタニとライバル関係となるメーカーは、「赤」の松元機工(鹿児島県揖宿郡頴娃町)と、「青」の文明(鹿児島県日置市伊集院)がある。松元工機は茶業用農作業機を、文明はたばこ系機械を主力としているようで、茶もタバコもそれぞれ鹿児島県の主要農産物ですから、県系農業を支えている企業と思われます。
かりとばせ!サトウキビ!さて。ハーベスタの秘密に迫ってみたいと思います。まずはハーベスタを象徴する前面に装備された4本のドリル。実際には穴を掘るようなドリルなどではなく、らせん状の刻みがついたローラーで、クロップリフター(デバイダ)と呼ばれるもの。内側のクリップリフターはサトウキビを刈り取り口へ誘導するために中に向いて回転し、外側のクリップリフターは刈り取るのに邪魔なサトウキビを外へ弾くために、内側とは逆に回転します。
ハーベスタが一度に刈り取れるのは、この内側のクリップリフターの幅だけなので、倒れこんでいるキビや絡まったキビを避ける役目があり、ふたつのクリップリフターの間に縦に回転するカッターが装備されています。絡まったキビの葉をこのカッターで切断して外へ逃がし、効率よくキビを刈り取るように工夫されています。
かりとばせ!サトウキビ!クロップリフターでハーベスターの前面に集めたキビを、下向きに回転するギザギサがついたノックダウンローラーで押し下げ、その下の底面にある歯車のようカッターが付いたふたつのベースカッターが、内側に巻き込むようにキビの根元をカットしてゆきます。カットされたキビはそのままフィンドローラーで奥へと押し込まれ、フィードローラーでハーベスタの中に送り込まれてゆきます。
画像で見るとキビを取り込むドリル状のクリップリフターの下端は、地面から高い位置にあって、一見、根元から刈り取ることなど出来そうにない位置にみえますが、実はハーベスタは畑やキビの状態にあわせて、車体を上下に傾けることが出来るのです(今回は実作業ではないので運搬時の位置)。
かりとばせ!サトウキビ!刈り取って車体の奥に送り込まれたキビの行方を追う前に、ハーベスタの足回りを見ておきます。柔らかな土質の畑でも作業が可能なゴム製の無限軌道(キャタピラ)です。ハーベスタは農作業機であって、公道の走行は出来ないので走行速度は求められていませんが、やはり気になるところ。スペックによると高速時走行でも9km/hと果てしなく遅いです。最も作業時はさらにゆっくりで、人が歩くより少し早い程度だそうです。大型のハーベスタには車輪式もありますが、自重があることから着圧で畑の土を硬くしてしまうため、畑主に敬遠されることも多いそうです。
かりとばせ!サトウキビ!コックピットも覗いておきましょう。4面ガラスのキャノピーがある箱型でひとり乗りで、ハンドルはありません。ハーベスタに装備されている各装備を操作することが出来るレバーが並び、スピードメーターの代わりに各部の駆動用の油圧計がいくつもあります。実用性重視ですが、運転席というよりはコックピットと呼びたい雰囲気があります。もう少しややこしいレバーやメーターがあれば、ロボットを操作している気分になれそう。締め切った環境となるコックビットは、勿論、冷房完備なのは云うまでもありません。
かりとばせ!サトウキビ!ハーベスタ前面のベースカッターで刈り取られたキビは、フィードローラーを通ってコックピットの下から車体の中央部へと運ばれます。送り込まれたキビは、三枚の鋭いが回転するチョッピング(切断するローラー)によって、一定の長さに切断されます。
かりとばせ!サトウキビ!短くカットされたキビはハーベスタ後部にある網の袋へと次々に詰められてゆきます。一方、いらない葉っぱなどは最上部にある強力なブロア(風選式エキストラクター)によって外に勢いよく排出されます。ブロアの出口は水平方向に回転させることが出来るので、吐き出す方向を変えることが出来ます(畑の隣が人家だったりした場合など、捨てる方向を選択できる)。
かりとばせ!サトウキビ!最後は実作業ではないのでイメージが少し湧きづらいのですが、ハーベスタは畑を移動しながらキビを刈って、後部に装着された網袋にキビを溜め込んでゆきます。この網袋がキビで満タンになったら、スイッチひとつでハーベスタから網袋を切り離すことが出来ます。満タンの網袋はひと袋で、およそ1トンのキビが収穫されたことになります。そして収穫されたキビは10トントラックにまとめて積み込まれ、製糖工場へと運ばれて一連のキビ刈り作業が完了となります。
鎌でひとつひとつキビを刈り取ってゆく、いわゆる「キビ倒し」は今でも行われていますが、刈り取ったキビの葉を手作業で剥き、人力でひと塊に集めて束ねるということを、ハーベスタは圧倒的な作業効率でこなしてしまいます(尚、取材時のハーベスタは製糖期に向けて整備中で、機械類のカバーなどが外されおり、通常では隠れいてる油圧ホースなどの部分が見えていますので、実働時はもっとすっきりとしています)。
さすがはサトウキビを刈り取るために生まれてきた専用のメカだけのことはあります。これから最盛期を迎えるキビ刈りのシーズン、島のサトウキビ畑でうなるエンジン音が聞こえてきたら、それはまぎれもなくボクらのスーパーマシン「ハーベスタ」に違いありません。
進め!ボクらのハーベスタ!島にサトウキビがある限り!。行け!みんなのハーベスタ!島の未来を切り拓け!。戦え!刈り取れ!ハーベスタ!。

  ◆ハーベスタ動画@ロケ地宮古島 [2010/019追記]
 

【参考】
UOTANI(魚谷鉄工)=http://www.ut-t.co.jp/
アグリステーション鹿児島=http://www.geocities.jp/kurobee55jp/

(文+写真+編集:モリヤダイスケ 協力:砂川観光)





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Posted by あんちーかんちー編集室 at 09:00│Comments(0)かんちーな企画
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