2009年10月27日
ぴんぎれ~!パーントゥがやって来た-島尻のパーントゥ-

今年も「アイツ」の季節がやってきました。臭い泥をなすりつけて追いかけて来るアイツ、「島尻のパーントゥ」の季節です。人々を追いかけまわして泥を塗るパンートゥは、決して悪者などではなく泥によって厄を払い、無病息災をもたらす大切な集落の神様なのです。

島尻集落の奥。ンマリガー(生まれ井戸)から三体のパーントゥが出現しました。親(ウヤ)、中(ナカ)、子(ファ)のパーントゥは、身にまとったキャーン(シイノキカズラ)にンマリガーの底から汲み出した泥をたっぷりとまとい、杖と仮面を手に悠然と歩んでゆきます。

三体のパーントゥは集落にある三ヶ所のムトゥ(元家)廻りへと向かいます。ムトゥはパーントゥの面を保管している家で、パーントゥは祭りの始まりの報告し、酒と塩のお清めをもらいます。
この時、パーントゥの相手をする集落の人は、問答無用で泥が塗られますが、集落の人にとっては大切な神事であり、厄を払う祭事なので、塗られても悠然と笑顔なのが印象的です。

いよいよパーントゥは集落を練り歩きながら泥をつけて厄を落とし廻る、集落をフィールドにした巨大な鬼ごっこのような状況突入します。突如、パーントゥはダッシュして襲いかかったり、ふいに動き変えて抱きついたりと、予想を超える動きでやってきます。
観客はパーントゥに泥を塗られたいような、塗られたくないような、なんとも遺いえない距離を保ちつつも、その動きに一喜一憂。時に、勇気を出して近づき、カメラを向けた途端に襲われたり、脱兎のごとく逃げ切ろうと走るその後を執拗に追いかけられたり、ふいに振り返って逃げ遅れた人にのしかかったりと、傍目にはまさに阿鼻叫喚の絵図が繰り広げられます。



パーントゥは毎年、ンマリガーから生まれてくる神様なので、中に人などはいませんが(笑)、今年のパーントゥはとても足が速く、その上かなりの暴れん坊でした。日が落ちて集落に夜が訪れると、闇に溶け込んでしまうパーントゥは音もなくそっと近づき、ふい飛びだして襲いかかる攻撃に、何人もの人が犠牲になっていました。
ここ数年で急速に注目度が増大した奇祭のパーントゥ。近年は屋台も出るようになるなど大きな賑わいを見せていますが、例年にも増して今年は観光客が大挙して訪れて、祭りの中心となる島尻購買店前は身動きが取りづらいほど。

今年からパーントゥの泥の補給所が、島尻購買店の角から集落センターに変更されて、祭りの中心がやや東にずれたものの、多くの観光客が購買店前に留まってしまい、パーントゥがおいそれと近づけない状況。誰かがパーントゥに襲われ、のしかかられたりされようものなら、マスコミの取材陣も困惑するほど、カメラや携帯を片手にした観光客がパーントゥをわーっと取り囲んで激写する始末。人が多すぎて肝心のパーントゥがどこにいるか見えなくなるくらい、アイドルのような大人気ぶりとなっていました。
とはいえ、奇祭パーントゥは国指定重要無形民俗文化財。加熱する過剰なその人気ぶりと盛り上がりによって、今よりも灯火のない時代に、闇の中で妖しくおどろおどろしく畏怖を持って催されていた、集落の祭事としての面影が薄れようとしている気がしていて少し心配でもあります。
それでもやっぱり誰もがパーントゥの襲来には、思わず「ぴんぎれ~!」っと逃げ出してしまうのです。数百年前にパーントゥの面が浜に流れつき、集落の厄を払い清める異形の外来神として畏れてきたものだから、きっとこの先も決して変わることはないでしょう。
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(文+写真+編集:モリヤダイスケ)
Posted by あんちーかんちー編集室 at 09:00│Comments(0)
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