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2009年01月27日

野原のサティパロウ~もうひとつのパーントゥ~

野原のサティパロウ~もうひとつのパーントゥ~
自衛隊のレーダーサイトが物々しく林立する野原岳の麓、上野地区の北方に位置する野原(ぬばる)集落に伝わる、里払い(サトゥパライ)の年中行事が行われました。サティパロウは「野原のパーントゥ」とも呼ばれ、宮古島北部の「島尻のパーントゥ」と共に「宮古島のパーントゥ」として国指定重要選択無形民俗文化財に指定されている祭事です。

島尻、野原、共にパーントゥと呼ばれていますが、パーントゥの面が使われることと、集落の厄を払い落とすという共通点は見られるものの、それぞれのパーントゥの形態は異なった祭事となっています。
島尻で行われるパーントゥは、旧暦の九月の戌の日に行われます。面を付けキャーン(シイノキカズラ)と臭い泥をまっとった、ウヤ・ナカ・ッファ(親・中・子)の三体の来訪神が、生まれ井戸(ウマリガー)から現われ、集落を練り歩きながら厄を払いの泥をつけて追いかけ回る、奇祭として広く知られています。
野原のサティパロウ~もうひとつのパーントゥ~
もうひとつのパーントゥである野原のパーントゥは、サティパロウ(里払い)とも呼ばれ、旧暦の十二月最後の丑の日(今年は1月20日:旧歴の十二月二十五日)に行われます。同じパーントゥという集落行事を開催する日も異なっており、雰囲気も島尻とずいぶん違っているのです。
それでは野原のパーントゥをレポートしながら、その違いを見てみましょう。

野原のサティパロウ~もうひとつのパーントゥ~
夕暮れ前、集落の女性たちがニーマガー(古い降り井戸)に集まり、センニンソウ(仙人草~つる植物)とマーニ(桄榔:クロツグ~ヤシ科)で編んだ飾りを頭と腰に巻きつけ準備を始めます。野原のパーントゥへは、集落の女性と小学校高学年の男子だけが参加し、大人の男性と女の子は参加しません。
女性たちの準備支度が済むと、集落の東のはずれにある大御嶽へと移動して、いよいよ野原のパーントゥが始まります。
まず、主役となるパーントゥの面を持った子供と一緒に大御嶽へ祈願します。続いて草の飾りを付けた女性たちが、手に持ったツサギー(藪肉桂:ヤブニッケイ~シナモンの一種)の小枝を打ち鳴らし、リズミカルに「ホーイ、ホーイ」とかけ声をかけながら、パーントゥを中心に円陣を組んで左まわりで廻ります。そして「ウルウル・・・」と奇声をあげて、ツサギーをかざしてパーントゥを取り囲みます。
野原のサティパロウ~もうひとつのパーントゥ~
ガサガサとツサギーの打ち合わせる音と、独特のリズムのかけ声は、厄を威嚇するものだそうです。円陣をといた一行はパーントゥを先頭に、二列に並んだ女性たちが、ふただひ「ホーイ、ホーイ」とかけ声をかけながら、別の子供が吹くほら貝の音を響かせて集落を練り歩き始めました。
パーントゥの隊列は集落の四つ辻に着くと、パーントゥを中心に円陣となり、儀式とも踊りとも思えるような、厄払いを繰り返しながら小気味よく進みます。
野原のサティパロウ~もうひとつのパーントゥ~
辻々で厄払いを行いながら集落を練り歩き、西のはずれのサトウキビ畑へと向かいます。そこは「ムスルンミ」と呼ばれる場所で、たどりついた女性たちは、次々に身につけていた飾りを外し手にしていたツサギーを置きます。これで集落の厄払いは済み、野原のパーントゥは完了します。
島尻のパーントゥのように、祭事とはいえゲーム性が強い動的なものではなく、年末(旧暦)の煤払いのように集落の厄を払い、無病息災で新しい一年を迎える準備するという野原のパーントゥは、とてもほのぼのとしていました。
野原のサティパロウ~もうひとつのパーントゥ~
似て非なるふたつのパーントゥ。正確なところは歴史の彼方にあり、想像を豊かにするしかありませんが、同じ宮古島の中とはいえ、ふたつの集落は遠く離れています。島尻のパーントゥのいい伝えでは、仮面が海岸に流れついたことが始まりとされ、来訪神としてパーントゥが位置づけられています。
一方、野原は宮古島のほぼ中央にあって海には面していません。いい伝えも聞くところによると、昔、疫病が流行した時に、悪疫を退けるために作られたらしいのですが、正確なところははっきりとしていません。
また、1716年に上野地区で三番目の村として誕生した野原村は、平良の久松村からの移民によって開村されました。久松といえば五勇士でも知られる海人の集落でもあり、海とのつながりが見えたようにも思えますが、勿論、その久松でパーントゥは行われていません。
野原のサティパロウ~もうひとつのパーントゥ~
偶然、ふたつの地域で生まれたとは考えにくく、かといってその昔、全島でパーントゥがおこなわれていたが、何らかの理由で廃れてしまったという妄想にはちょっと無理があり、沖縄県内各地の集落で行われている厄払いの行事、「シマフサラシ」が独自に進化したものではないかと推察に至りました。
シマフサラシは「島(里、集落の意味)腐らし」と書き表し、地域によって開催時期は異なりますが、牛や豚、鶏などをつぶして集落の人々でそれを共に食します。そしてその骨をくくりつけた縄を村の出入口に張り、いわば集落に境界を作るようにして厄災を退ける祭事で、集落全体を厄払いをするスタイルは野原のパーントゥ(サティパロウ)に繋がっているように思えました。
野原のサティパロウ~もうひとつのパーントゥ~
結局のところ、きっちりパーントゥの謎に迫ることは出来ませんでしたが、野原にはサティパロウの他に、国指定重要選択無形民俗文化財に定められている、「マストリャー」と呼ばれる豊年祭が旧暦の八月十五日に行われています。マストリャーは男性の勇壮な棒踊りと、女性の優雅な踊りが行われる祭で、古くからの農耕儀礼の歌や踊りを伝える貴重な祭です。
ふたつも無形民俗文化財に指定されている野原には、大切にしてゆきたい宮古島の民俗風習が、根強く残っているちいさな集落でした。

(文+写真+編集:モリヤダイスケ)





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