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2010年07月23日

「宮古島を潜る」 とある宮古の巡検雑記 其の二

「宮古島を潜る」 とある宮古の巡検雑記 其の二
また、お逢いしましたね。4月ぶりの「かんちーな企画」新シリーズのアレです。そう、宮古島で一番のマニアックな話が読める「とある宮古の巡検雑記~スクリブラー~」の二回目です。宮古島といえばやっぱり“潜って楽しむ”ことですよね。だから、島に潜ります。隆起珊瑚礁の島である宮古島は、地質地形の特性状から島のあっちこっちに穴があいています。そんな大地に口を開けている穴へを巡る探検奇譚。

※     ※     ※     ※

潜る穴の大半は宮古島の表土のすぐ下にある琉球石灰岩を、雨水などの浸食によって地中に作られた空間が、陥没して地表に出来たドリーネ状の縦穴で、かつてはこの穴の底に湧く水を飲料水として利用していました。こうした穴の井戸は「ウリガー」と呼ばれ、水を汲むために石組みの階段などを作り、水道設備が普及する近年まで、とても大切に使われてきていました。2回目の今回はちょっと変わった場所にある穴をご紹介。

『大嶽城の前の井』
「宮古島を潜る」 とある宮古の巡検雑記 其の二

大嶽城(うぷたきぐすく)は宮古島のほぼ中央に位置する野原岳にあった城で、宮古島の戦国時代ともいえる群雄割拠の14世紀中頃、精強な軍事力を誇る与那覇原軍に滅ぼされてしまいます。前の井(マイヌカー)はこの城の水源として作られたもので、大嶽城の陥落の物語にも登場します。
大嶽城の主は智謀に勝れた大嶽按司が病死(老衰?)で亡くなり、残された三人の息子が跡を継ぐ事になるのですが、長男のピギタリは武芸を嫌って自ら百姓の仲間となり、次男のツルアズ(知呂按司)と、三男のカニマルカニアズ(金丸金按司)のふたりが家督を継ぎますが、島の覇権を狙っていた与那覇原軍はこの機に乗じて大嶽城へと攻め込みます。
次男・知呂は東門を、三男の金丸金は西門をそれぞれ守って戦うも、屈強な与那覇原軍の前に力尽きて、ふたりとも討死し大嶽城は陥落します。ところが落城した大嶽城内には、ひとりも住人が残っていなかったのでした。
与那覇原軍が攻めて来ることを察して、老若婦女子を城の裏手にある「カシフガーラ」という洞穴に避難させていたのでした。城を攻め落とした与那覇原軍は、城内に人々がいなかったことから、どこかに姿を隠しているであろうと待ち伏せを謀り、やがて前の井へと水を汲みにやって来た少女を見つけます。少女の後を追って、人々が隠れているカシフガーラを突き止めた与那覇原軍は、隠れていた者たちを皆殺しにしたといわれています。
「宮古島を潜る」 とある宮古の巡検雑記 其の二
大嶽城址の大半は野原岳にある公園の一部として公開(石畳なども残されている)されていますが、前の井は公園の北側にある「航空自衛隊 南西航空警戒管制隊 第53警戒隊」が駐屯する宮古島分屯基地の中にあり、通常は一般に公開はされていません(今回の訪問レポートは、宮古歴史文化ガイドの会の見学会に参加した時のもの)。井戸は基地施設の裏手の斜面に掘られており(人工的に掘削した)、石段が地底深くへと伸びています。底面にはさらに深く掘られた縦井戸(後年のものと思われる)があり、穴の奥の暗がりに水面が光っていました。
前の井は城主の大嶽按司が掘らせた井戸らしいのですが、野原岳といえば山の少ない宮古でも高い部類に入る場所。そんな山の中で水源となり得るほどの井戸を掘りあてたというのは、なかなか凄い技術だったではないでしょうか。
尚、現在の野原集落は1718年に村立てされたので、大嶽城時代の隆盛とは歴史は異なります。

『金志川泉』
「宮古島を潜る」 とある宮古の巡検雑記 其の二
友利集落からイムギャーマリンガーデンへ降りる坂の途中、友利元島(明和の大津波以前に友利の集落があったとされる場所)の一角にある、金志川豊見親の屋敷跡から南西方向に150メートルほど進んだ藪の中に金志川泉(キィキャイガー)はあります。表道路に面している屋敷跡は割とすぐに発見することが出来ますが(といっても、案内板はない)、さらにその奥にあるガーは旧・城辺町の設置した案内板はあるものの、その位置はやや判り辛い上に、ガー周辺の整備もされていないため、人の侵入を拒んでいるような感じです。
うっそうと茂った南国の勢いある藪の中に続く、緩いスロープを下ってゆくと、岩場に小さな穴が開いていました。どうやらここがガーの入口のようですが、ところどころに不法投棄されたゴミが散乱しており、貴重な名跡とは思えない残念さです。狭い岩場にある穴の奥へとさらに進んでゆくと、御嶽で見られるような香炉らしきものがあるのですが、ここにもゴミが散らかっていました。穴はさらに小さく狭くなって奥へと続いていますが、この先は本格的なケービングの装備がないと厳しそうなので、探検はここまでとしましたが、なんでもこの先には稀塩水の洞窟湖が存在しているそうです。稀塩水なのできっとどこかで海と繋がっているのだと思いますが、海までは軽く300メートルはあるので全貌はもしかすると相当巨大なものなのかもしれません(尚、このガーは海水を含んでいたので、飲料水としてはほとんど利用されていなかったようです)。
 洞窟潜水探険家 CaveteK Club(金志川泉の潜水調査の様子があります)
「宮古島を潜る」 とある宮古の巡検雑記 其の二
この金志川泉にゆかりのある金志川豊見親にも少し触れておきます。友利を中心とした宮古島南部を配下に治め、いわば仲宗根豊見親を中心とした宮古島連合政権の一翼を担っていた金志川豊見親は、オヤケアカハチの乱(王府の対八重山征伐)などにも従軍した武将(というより、豪族の長かも)。
しかし、仲宗根豊見親の亡き後、跡目を継いだ長男・仲屋金盛は、人望も厚く善政を行っていた金志川豊見親を嫉み、大嶽城でだまし討ちにして殺してしまいます。この事件を知った琉球王府は、「豊見親」職を廃して、王府直属の役人を送り込んで王府の直接統治を開始します。
これまで宮古は王府に任命される形ではありましたが、永きにわたり宮古人によって宮古が統治されており、王府は間接的にしか支配していませんでした。王府はこの事件を利用して名実ともに宮古を併呑し、完全な支配下に治めたのです。嫉みひとつで宮古の歴史が大きく変わってしまったという、エポックメーキングな事件となったのでした。

『アナ井』
「宮古島を潜る」 とある宮古の巡検雑記 其の二
うえのドイツ文化村の正門前に、アナ井(アナガー)はあります。えっ、そんなところにガーなんてあったっけ?と驚く方も多いのではないでしょうか。ドイツ村前の大きな通りと宮国から下って来る二車線の道路(マモル君がT字に勤務中)と、畑の脇を正門に向かってショートカットする一方通行の細い旧道に囲まれた、都市計画の残地のような直角三角形のエリアに隠されているのです。
正直、何度となく通った道だったので、アナ井の存在を知るまでは、南国・宮古らしい茂みの荒地だとばかり思っていました。そしてアナ井を訪れて、こんな所にこれほどのものが潜んでいたなんて!と、とても驚かされました。それくらい素晴らしいガーが隠されていました。
うっそうと茂った緑の下を奥へと進むと、アナ井へと降りる入口があり、きちんと案内板が掲げられていました。掘削された年月は判っていないそうですが、宮国集落の番所跡の東側に位置しているので、当時の役人たちによって「東井」と呼ばれていたらしいとのこと。また、大正15年にはガーの大規模な改修工事も行われており、水道が普及するまで宮国集落の生活を支える、貴重な水源として多くの人々に利用されいてたのだそうです。
「宮古島を潜る」 とある宮古の巡検雑記 其の二
昔の賑わいを彷彿させるような、幅のある石組みの美しい階段が地底へと続いています。階段は落ち葉や枯れ枝で埋るほど積もっており、今はあまり人も訪れていないようでした。底から空を見上げると空を覆いつくす、緑の隙間からこぼれる光がキラキラと輝いていて、なかなか風情があって素敵です。
穴の奥にはコンクリートで囲われた風呂桶のような湧水槽があり、透き通った水が満々と湛えられていました(画面に白く見えているのは、浮いている発泡スチロールのゴミ)。
現場では気づかなかったのですが、あとで画像をチェックしていたら湧水槽の左手にある明るい茶色の岩のところに、マクガン(ヤシガニ)が顔を出しているではありませんか(しかも、映っていたのはこの一枚だけ)。滅多に人も来ないし、大好きな水もふんだんにあるので、ヤシガニ君はここを棲家にしているのでしょうか。ちょっと気になる存在です。

「とある宮古の巡検雑記~スクリブラー~」第二弾では、ちょっと風変わりな穴をチョイスして見ました。もっとも、この穴巡りそのものがすでにマニアックではあるのですがね。島にある穴たちは日常の中で、ちょっとした未知の世界への冒険心をくすぐるような場所であり、島の生活を支えていた貴重な文化遺産でもあります。それは遠い戦乱の世から近代に至るまでもが連綿と繋がっていて、多角的に宮古島の面白さを教えてくれる存在のような気がします。それではまた、お逢いしましょう!。

[大嶽城の前の井]

[金志川泉]

[アナ井]

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「宮古島を潜る」 とある宮古の巡検雑記 其の一

蛇足。「とある宮古の巡検雑記-スクリブラー-」
巡り廻って~巡検して、レポートする~雑記を記すというイメージをスクリブラーと表してみました。スクリブラー(Scribbler)とは、なぐり書きする人、乱筆家、悪筆の人といった意味で、まさにヘボ文士にぴったりな言葉。そして本当にどうでもいいことではありますが、別のマニア心から「とある××の ×××××」という定型句を、どうしても付けてみたかっただけというサブタイトルに過ぎません(謝意)。
(文+写真+編集:モリヤダイスケ)





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